将棋世界1999年7月号付録、「一生に一度の会心の一着&穴があったら入りたい究極の大ポカ」の郷田真隆棋聖の項より。
【ヒント】
昨年度の王座戦の挑決、谷川竜王(当時)戦より。私の棋士生活の中での最悪の一着は?
(後手が当時の郷田九段)
【解答】
△5三香
▲5一金打までの一手詰めのお手伝いになってしまった…。
以下、郷田棋聖のコメント。
昨年度、前半の3ヵ月は絶好調とも言える成績で、自分でも驚く位でした。
しかし7月の終わり位から調子が下降している感じがあり、この対局は一抹の不安を抱えながらの対局でした。
相掛かりの序盤から激しい展開で、ずっと難解な局面からやっとはっきりした勝ちになったと思った瞬間の出来事でした。
私は元来こういうポカはしないタイプなのですが、これには参りました。その夜は眠れず、新幹線の中で仮眠をとってTV将棋の対局場へと向いました。
時がたてば、これも一つの思い出です。
—–
棋士別成績一覧によると、1998年度の郷田九段は4月から7月24日まで22勝2敗。
7月28日の達正光六段との対局で敗れ、対谷川戦は7月31日に行われた。
王座への挑戦を目の前にした場面での大ポカだから衝撃はかなり大きかっただろう。
当時の郷田九段が仮眠をとっただけで臨んだ翌日のTV対局(早指し戦)は対田中魁秀七段戦で、この対局は勝っている。
このような流れは郷田九段らしくて、非常に格好いいと思う。