羽生善治名人の月別勝率を分析する

新春特別企画、「強い月、弱い月シリーズ」。

第一弾は羽生善治名人。

週刊将棋12月22日号のバトルロイヤル風間さんの4コマ漫画で、次のようなやりとりがある。

1コマ目

羽生名人が渡辺竜王に対して「いやー、君の竜王戦だけとも言える強さには感心するのだが、何で?」

4コマ目

渡辺竜王が羽生名人に対して「てゆーか、羽生さん竜王戦だけ弱いですね、何で…」

このシリーズでは、バトルさんの漫画の台詞を統計的に裏付けられるかどうか試みたいと思っている。

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羽生名人の1991年4月から2010年12月までの月別勝率は以下の通り。(棋士別成績一覧のデータをもとに加工。括弧内は勝率)

1月 80勝27敗(0.748) 

2月 97勝37敗(0.724) 

3月 68勝35敗(0.660)

4月 45勝21敗(0.652)

5月 46勝16敗(0.742)

6月 57勝29敗(0.663)

7月 77勝25敗(0.755)

8月 85勝30敗(0.739)

9月 107勝35敗(0.754)

10月 74勝27敗(0.733)

11月 59勝41敗(0.590)

12月 75勝26敗(0.743)

20年間の通算勝率は0.712(870勝352敗)なので、青葉の5月から調子を上げ、梅雨の6月にペースが下がるものの、10月まで絶好調。突然11月に調子を落とし、その反動か12月から2月まで絶好調に復帰。春が訪れる3月、4月はペースが下がる、というのが基本の雰囲気だ。

更に、1990年代と2000年代と直近5年間で勝率を比較してみると次のようになる。

全体 1999年代 0.740→2000年代 0.683(直近5年は0.681)

1月  0.729→0.771 (直近5年は0.789)更に好調月に

2月  0.808→0.623 (直近5年は0.600)不調月に転換

3月  0.667→0.655 (直近5年は0.739)苦手克服

4月  0.741→0.595 (直近5年は0.565)最不調月に転換

5月  0.750→0.737 (直近5年は0.773)好調維持

6月  0.676→0.653 (直近5年は0.615)変わらず

7月  0.826→0.696 (直近5年は0.760)勝率落ちたが好調維持

8月  0.810→0.667 (直近5年は0.607)不調月に転換

9月  0.747→0.761 (直近5年は0.852)勝率上がって最好調月

10月 0.746→0.714 (直近5年は0.611)この5年で不調月に転換

11月 0.565→0.632 (直近5年は0.643)勝率戻すも不調月

12月 0.789→0.682 (直近5年は0.600)この5年で不調月に転換

あくまで過去のデータによるものだが、羽生名人の場合は、9月、1月、5月、7月が、以前から変わらぬ、あるいは以前にも増して好調月。3月は調子を上げてきている。

不調月は、なぜか好調月の谷間にあり、2月と8月のニッパチと4月。

6月、11月は、以前から変わらぬ不調月。

この5年で、10月と12月も不調月に転換したので、竜王戦の季節は厳しい戦いになっているものと思われる。(不調月といっても勝率が6割以上なのだからすごいことだが)

なぜ、羽生名人の月別勝率にこのような傾向があるのかは説明ができない。

2009年度、順位戦で親子丼(上)を頼むとなぜ勝率が高かったか、という問題と同じだからだ。

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と書いてから、玲瓏:羽生善治 (棋士)データベースに羽生名人の詳細な対局勝敗データがあることを知った。

年度別や対棋士別はもちろんのこと、月別、対局地別、戦型別、先手後手別など多様な切り口で整理されている。

それ以外にも、掲載観戦記、書籍、対談データなど、羽生名人に関する全てが揃っていると言っても過言ではない。

今回の分析は昨年の12月25日頃に行ったものだが、「玲瓏:羽生善治 (棋士)データベース」がここまできめ細かいことを知っていれば、私の作業負荷はだいぶ軽減されていたことだろう。