羽生式上達法と森内式上達法

羽生名人、森内九段とも、チェスの強豪として知られるが、二人はどのようにチェスを学んで上達していったのか。 近代将棋2004年6月号、湯川博士さんの名人戦第1局観戦記「果断の打開、吉と出る」より。

 今年の名人戦は羽生・森内という宿命のライバル、その上、成田には大いなる縁がある。

 一昨年の春、成田に住むチェス友の結婚式に、羽生・森内が招かれ揃って出席。珍しい光景に出席者は大喜び。チェスの好きな両雄だが、決して大会も遠征も一緒にはならない。

 このチェス友は成田の隣・芝山町診療所の医師で、将棋も有段者。チェスの海外遠征によく行くが、羽生さんが急に海外に行くときでも、診療所を閉めて同行する熱烈な羽生親衛隊である。森内さんとも4、5回海外試合に行っている親しい仲。

 私もこの医師も、羽生・森内の激突は楽しみだが、両方に勝たせてあげたいのが贅沢な悩みだ。

(中略)

 私は羽生、森内とはチェスを通じて、10年ほど前からつきあいがある。羽生が先に始め、すぐ森内が続いた。 覚え方は対照的で、森内は片っ端からチェス本を漁り、信じられない量を吸収してゆく。羽生は1局面をとことん研究して、読みの鍛錬と感覚を磨く。ときには、世界のトップクラスのプレーヤーが驚嘆するような読み筋を見せたこともある。 こうして二人はあっという間に日本のトップクラス、世界ではプロクラスまで伸びていった。

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羽生名人、森内九段とも参加していたのが朝霞チェスクラブだった。

朝霞チェスクラブは、1990年にジャック・ピノーさんが活動を開始したチェスサークル。 金曜日の夜に朝霞の公民館などで例会が開かれた。

湯川博士さんも初期から活動に参加し、朝霞チェスクラブの機関誌「チェックメイト」の編集も行っていた。

朝霞チェスクラブホームページ活動記録を見ると、羽生名人・森内九段の朝霞チェスクラブの大会での成績は次の通り。

1994年朝霞4周年記念チェス大会
Bクラス2位タイ 森内俊之

1998年新年チェス大会
Aクラス2位タイ 森内俊之

1998年クリスマスチェス大会
Aクラス2位タイ 森内俊之

1999年朝霞チェスサークル設立9周年記念大会
Aクラス優勝 森内俊之

2001年朝霞チェスサークル設立11周年記念大会
1位タイ 森内俊之

2001年クリスマスチェス大会
Aクラス優勝 羽生善治

2002年春のチェス大会
2位タイ 羽生善治 4位タイ 森内俊之

2002年朝霞チェスクラブ設立12周年記念大会
Aクラス1位 森内俊之

2003年クリスマスチェス大会
Aクラス1位 羽生善治

例会で羽生名人と森内九段が顔を合わせることはあったのかもしれないが、大会では、2002年春のチェス大会を除いて、まるで打ち合わせでもしていたかのように、二人が同時に出場することがなかった。

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再び近代将棋2004年6月号、湯川博士さんの名人戦第1局観戦記より。

 まだまだ羽生粘りが見られると思っていたら、突如投了。 対局室に行って感想を聞いたが、森内の声が小さく羽生も無言で、聞き手の記者も遠慮がち。しかし20分ほど本譜と関係ない局面を突ついていたら、「え、どこ」「うん、ここでね」と友達口調になった。 成田対局は、いきなりワザが決まって終わった感があるが、一発で決まる真剣勝負の恐さを十分に味わった。

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羽生善治名人と森内俊之九段は31年来のライバルとはいえ、31年前の子供の頃から仲の良い関係だ。 チェスの大会や海外遠征には決して同タイミングで出場しなかった二人。 趣味のチェスでまで、本業のライバルと顔を合わせたくなかったのかもしれないし、そうするためにお互い二人で事前にスケジュール調整をしていたのかもしれないし、私の中での妄想は広がるばかりだ。

 

 

名人戦第3局対局場「フェニックス・シーガイア・リゾート」

名人戦第3局は宮崎市の「フェニックス・シーガイア・リゾート」で行われる。→有料中継

また、この第3局は全国で大盤解説会が開かれる。→全国大盤解説会一覧

〔シーガイアの復活〕

シーガイアは、国のリゾート法の第一号指定を受けた「宮崎・日南海岸リゾート」の中核施設として第3セクター方式として1994年10月に全面開業した。

高層ホテルやコンベンションセンター、大型屋内遊泳施設(人工波のプール)、ゴルフ場などを備え、2000年7月にはサミット外相会合も開かれた。

しかし経営面では、1995年には386万人の利用客を集めたが、その後入場者数は減り続け、一度も黒字を出せないまま、2001年2月に、第3セクターとしては過去最大の負債3,261億円で会社更生法の適用を申請した。

そこで新たな支援企業として名乗りを上げたのが、米国の投資会社リップルウッド・ホールディングスだった。(162億円で買収)

Wikipediaによると、その後、75億円を投じてゴルフ施設と温泉施設を整備するなど、富裕層をターゲットにした経営再建を進めた事により、客単価を向上させることに成功。

韓国・中国からの観光客誘致や宣伝を積極的に行い、国内集客にもテコ入れを行うことにより、稼働率は上昇し、2006年度に初の営業利益黒字、2009年度には初の経常利益黒字化を果たしている。

〔フェニックス・シーガイア・リゾート内のレストラン〕

シーガイア内には、レストランがある施設だけでも、二つのホテル(シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート・サンホテルフェニックス)とコンベンションセンターがあり、その数だけでも相当なものになる。

対局が行われるのはコンベンションセンターにある料亭四季乃

また、コンベンションセンターに隣接しているのがシェラトン・グランデ・オーシャンリゾート。

シェラトン・グランデ・オーシャンリゾートのレストランと料亭四季乃に絞って昼食向きメニューを探してみたい。

料亭 四季乃

・会席弁当 4,000円~

鉄板焼 ふかみ

・宮崎牛のプルコギ風ランチ 2,500円

・ふかみ膳(特製牛すじ丼 温玉のせ) 1,500円

・ハンバーグステーキランチ 2,010円

・ステーキランチ ¥2,500

・シーフードランチ(サーモン・ホタテ・タコ) 1,900円

中国料理 藍海

・セットメニュー 1,300円~1,900円

青椒牛肉絲、鶏の葱ソース 、芝海老のマヨネーズ炒め、芝海老のチリソース、酢豚、季節野菜のガーリック炒め、牛肉の黒胡椒炒め、麻婆豆腐、春巻き 等から1~3品を選択可能

日本料理 花洛

•MOVE IT! RALLYご当地弁当 2,500円

•がんばろう宮崎!弁当 1,800円

•和風ハンバーグ膳 2,000円

•花洛ステーキ膳 1,800円

•天婦羅膳 1,800円

•天丼膳  2,000円

•天ざるそば膳 1,800円

•天ぷら うどん・そば (海老2本・野菜3品) 800円

寿司処 八潮

インターナショナルダイニング パインテラス

•ハンバーグステーキ(サラダ付き) 180g 1,800円

•チーズハンバーグステーキ 180g 2,000円

•日向鶏の香草焼きフレッシュサラダ添え 1,600円

•西米良サーモンのポワレ茸クリームソース 1,600円

•宮崎県産ポークステーキ 温野菜添え ジンジャーソース 2,000円

•宮崎県産牛ステーキ 160g 4,500円

•宮崎県産牛ステーキ 230g 6,500円

•パインテラス特製宮崎牛カレー(サラダ付き) 2,000円

•新鮮魚介カレー(サラダ付き) 1,800円

•パインテラスビーフバーガー 1,600円

•和牛カツサンドウイッチ 1,600円

•ミックスサンドウイッチ 1,200円

•クラブサンドウイッチ 1,200円

•サーモンとほうれん草のクリームパスタ 1,200円

•農園風パスタ トマトソース 1,200円

•シーフードパスタ 1,300円

•ラザニアミートソース 1,300円

〔昼食予想〕

このようにメニューが豊富なのは予想者泣かせだ…

さまざまな切り口から考察をしてみたが、なかなか難しい。

そういうわけなので、今回は理屈抜きで行ってみたい。

羽生善治名人

一日目 クラブサンドウイッチ

二日目 シーフードパスタ

森内俊之九段

一日目 チーズハンバーグステーキ

二日目 パインテラス特製宮崎牛カレー

「銀杏記者vs蝶結記者」観戦記

5月1日の第4回武蔵の国府中けやきカップで中継を担当した銀杏記者と蝶結記者。

日本初の、同一対局の二人の中継記者による並行中継(決勝戦:松尾香織女流初段-島井咲緒里女流初段)を中心に、当日の中継を振り返ってみたい。

参考ブログ記事→「銀杏記者vs蝶結記者

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1回戦 蛸島彰子女流五段-中倉宏美女流二段戦 (蝶結記者)

蝶結記者の本中継の主題は、中倉宏美女流二段がファンの人気ユニット”Perfume”だった。

すべての事象が、Perfumeの曲名に強引なまでに結び付けられる。

いくつかのコメントをピックアップしてみたい。

6手目:△8五歩

中倉宏美二段といえば、人気アーチストperfumeのファンであるのは有名だろう。昨年の年末のフランボワーズカップ開催後の交流会では、のっち(大本彩乃)の扮装でダンスを披露してくれた。

最近、都内某所で、中倉宏美女流二段と船戸陽子女流二段がPerfumeの「チョコレイト・ディスコ」をPerfumeの振り付けのままで歌っているのを偶然見る機会があった。

その華麗さに、私は非常な感銘を受けた。

19手目:▲3八銀

これで美濃の部屋へ入室が完了。このひとりの部屋なら、あとはいくら暴れても騒いでも平気だ。音楽をかけて計画をねりねり、ワンルーム・ディスコ。

公開対局で蝶結記者が中継をしている時の姿を何度か見たことがあるが、真摯な姿勢で顔色をひとつも変えずにノートパソコンに向かっているのが常だった。

この時も、非常に深刻な表情をしながら「計画をねりねり」などと打っていることになる。

50手目:△9九角成

果敢に攻めを仕掛け、身をまかせてジャンプしてみる。Zero Gravityに、解き放てキミの心を。

寺山修司テイストだ。

117手目:▲2八同玉(蛸島女流五段の勝ち)

ダンスフロアが一瞬の静寂に包まれ、ディスコタイムが終った。中倉宏美二段が「負けました」と投了を告げた。終局時刻は12時01分。△1八香成と迫っても先手玉は寄らない。勝った蛸島五段は準決勝で島井咲緒里初段と対戦する。

必至をかけられた中倉宏美女流二段が蛸島玉に猛烈な追撃をかけるが、詰みがなく無念の投了。

「ダンスフロアが一瞬の静寂に包まれ、ディスコタイムが終った」が絶妙だ。

1回戦 松尾香織女流初段-渡部愛TJP戦 (銀杏記者)

ネット中継の神とも言うべき銀杏記者。

13手目:▲6九玉

矢倉は松尾初段の裏芸。

こういう解説が嬉しい。

20手目:△8五歩

単に△5五歩は▲6五歩△5六歩▲2二角成△同金▲5五角がある。 ▲7七銀と上がらせて、8八角を重くする狙い。

こういう解説も嬉しい。

26手目:△3三銀

渡辺竜王が最初に指して話題になった手。従来は△5四銀としていた。自分だけ歩交換をしようとする欲張った手。

簡潔にして、歴史と狙いが一度に理解できる解説。

55手目:▲6四成銀

しかし、この切り返しがある。読み勝っているのはどちらか

スリリングな局面であることを初心者でも感じ取れる。

82手目:△3二同銀

銀が2枚並んだ形は隙が少ない。

このような解説も嬉しい。

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準決勝 蛸島彰子女流五段-島井咲緒里女流初段戦 (銀杏記者)

「もしかしたら、次に△7四歩と突かれます?」(中座七段)

「うーん、いやですね」(渡部TJP)

「だから行くしかないんですね」(中座七段)

のような、大盤解説会での解説をふんだんに取り入れた中継。

準決勝 中倉彰子女流初段-松尾香織女流初段戦 (蝶結記者)

24手目:△5三銀

この2人は1dayトーナメントでは昨年9月のファンクラブカップの予選で対戦し、その時は松尾初段が勝っている。とはいえこの時はオンライン対局ページを使っての対局で、実際に盤を挟むのは久しぶりとなる。新鮮な気持ちで対局をしていることだろう。

蝶結記者らしくなくて、かえって不気味な出だしである。

本局では、

「味のいい銀引きですね。松尾初段は味のいい手に惚れこむタイプなんです(笑)」(石橋四段)

と、銀杏記者と同様、大盤での解説が多く取り入れられている。

50手目:△2二玉

中倉彰子初段は宏美二段と同じく和服に袴姿が実に凛々しい。髪もややブラウンががって、本日会場で配布のパンフレットにある通り、ママドル棋士の代表選手らしい若々しさ。

51手目:▲4五歩

松尾初段はモスグリーンの薄手のニットに薄茶のスカート。胸元にあしらわれたビーズが目にもまぶしい。

このへんから蝶結流が発揮されてくる。

72手目:△4七歩

この2人はともに既婚者、しかも男性棋士を伴侶に持つという共通点がある。二人には、「結婚前と結婚後で妻となったことで将棋の棋風が変わったか」「ご主人さまが強い男性棋士となったことは、自分の将棋に大きな影響があったのか」「ご主人のどんなところを一番好きになって結婚されたのか」の3つを聞いてみたいと、本人が自分の将棋のことで頭がいっぱいで見ていないここでコッソリ書いておく。

85手目:▲5三銀

盤側から見ていると、気合いをこめて駒を激しい打ち付ける動の中倉初段vsおっとりとした手つきで表情をほとんど変えない静の松尾初段、という図式が見て取れる。が、松尾初段も実は鋭い手を飛ばし虎視眈々と狙っている。人妻の心はどうにも読みにくい。

本局のテーマは”人妻”であったことが判明する。

しかし、人妻に限らず、女性の心は読みにくい。

将棋世界最新号、高橋呉郎さんの「将棋好き作家点描」の中で、渡辺淳一さんも、

「授業料を相当払ってきたけど、こればかりは……。ようやくわかったのは、女はわからないということだね」

と述べていたと書かれている。

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決勝 松尾香織女流初段-島井咲緒里女流初段戦銀杏記者Ver) (蝶結記者Ver

日本初の、同一対局の二人の中継記者による並行中継。

全く個性の異なる二人の中継記者のコラボレーション(?)

同じ局面でそれぞれどのようなコメントだったのか。

39手目:▲8四歩

(銀杏記者)

「あら、同じ狙いができましたが、大丈夫かな」(堀口七段)

(蝶結記者)

府中市といえば、連想するのが大きな大きな東京競馬場。日本ダービーや天皇賞・秋、ジャパンカップなどのビッグレースが行われ、数々の名勝負の舞台となった。中山競馬場とともに日本の競馬を代表するコースだ。

41手目:▲8四歩

(銀杏記者)

「ポイントを取りましたね」(堀口七段)

(蝶結記者)

この2人が走り出せば、相振り飛車は必定。競馬では初めから走る距離が決まっているが、将棋ではスプリント戦なのか、長距離戦になるかは走ってみないとわからない。

46手目:△4二飛

(銀杏記者)

飛車の働きが大きく、先手優勢だ。

(蝶結記者)

しかし今日はどちらもスタートから手綱をしごいてどんどん押していく。今日は優勝者予想者クイズも行われている。投票者は、後半に余力を残さなくて大丈夫なのだろうか、とハラハラしているに違いない。

52手目:△4五歩

(銀杏記者)

「暴れていこうということですか」(中倉二段)
「そうですね。▲同歩なら△3三角から△5五角ということでしょう。悪い方は開き直れるんですね」

(蝶結記者)

毎年5月の府中で行われる3歳牝馬三冠の第二関門オークス。昨年のこのレースで、アパパネとサンテミリオンが1着同着で2頭が優勝、というG1初の出来事があった。正直この決勝戦の両者に優勝をあげたいのはやまやまだが、どちらが勝ちか白黒つけるのが将棋の世界。ミリ単位のデッドヒートを期待しよう。

55手目:▲8六角

(銀杏記者)

大駒を働かせる。
△3三金は指させませんよ、という意味。

ただし、ここは▲3二歩成があったようだ。

(蝶結記者)

やや話はそれるが、2007年にオークス3着、秋華賞で5着と好走を見せたラブカーナという馬がいた。女流棋界でラブカーナといえば、里見女流三冠だが、このたび奨励会編入試験を受けることが決まった。三冠を返上して戦いを挑むため歩みだすには、相当の覚悟が必要だったはず。男性に交じっての戦いは競馬の世界でも苦しいとされるが、その実績と実力をひっさげ新たな歴史を切り開いてもらいたいものだ。

57手目:▲7七桂

(銀杏記者)

▲6五桂のさばきを狙っている。
「全軍躍動ですね。見た目以上に差があります。1dayクイーンとはいえ、これを挽回するのは相当に大変です」(堀口七段)
「相振り飛車は怖いですね。何ということのない序盤だったと思ったのに」(中倉二段)

(蝶結記者)

閑話休題。かなり先手のリードが明らかになってきた。双眼鏡でのぞかなくても、差が離れているようだ。

「これは先手の全軍躍動です」(堀口弘七段)

61手目:▲9三歩

(銀杏記者)

「指されてみると厳しいですね。9九香も使ってしまおうという読みですね。先手はまったく遊び駒がありません」(堀口七段)

(蝶結記者)

松尾初段はここから、リードを徐々に広げる作戦に出た。一気に決着を焦ると、最後のスパートで息切れしてしまう。巧みなレース運びだ。

64手目:△3二飛

(銀杏記者)

▲5四歩の筋を避け、△3四金を狙う。ただし、△3七歩などと攻められないのはつらいところ。

(蝶結記者)

東京競馬場に例えると、3コーナーの大ケヤキを過ぎてこれから第4コーナーに、といったところだろう。早くも勝負どころだ。

66手目:△5六歩

(銀杏記者)

島井初段はここから30秒将棋。
松尾初段は残り1分程度。

(蝶結記者)

この手より島井初段は秒読みに。何もしないと馬がバテてとまってしまう。厳しい時間帯だ。

70手目:△4三金寄

(銀杏記者)

△6六角を狙っていて油断ならない。

(蝶結記者)

飛車筋を通して一瞬の脚を伸ばせるようにする。逆転劇は、長い直線の府中コースなら可能だ。

71手目:▲3三歩

(銀杏記者)

大盤では▲5五歩△同銀▲2二竜といった手段が示されていた。

(蝶結記者)

ここで両者秒読みに。さあ、いよいよ直線の叩き合いだ。

76手目:△1三角

(銀杏記者)

「勝負手ですね」(堀口七段)
「迷いますね」(中倉二段)

(蝶結記者)

馬体を寄せて食い下がろうとするのは常套手段。叱咤激励して、粘りを引き起こす。

84手目:△5七金

(銀杏記者)

「後手は受けていてもしょうがありません」(堀口七段)

(蝶結記者)

高い駒でムチの連打。がんばれ、がんばれ、と奮い立たせようとする。

87手目:▲4三竜

(銀杏記者)

駒得しつつ、▲9二金以下の王手を狙っている。

(蝶結記者)

あと100。松尾初段は後ろを振り返りながら、まっすぐ追い出しにかかる。

93手目:▲9二金(松尾女流初段の勝ち)

(銀杏記者)

この手を見て、島井初段がすぐに投了。松尾初段が1day初優勝を決めた。
▲9二金以下は△同香▲同歩成△7一玉▲8二銀△6一玉▲5二竜△同玉▲4二飛△6一玉▲6二金までの詰み。終局時刻は16時50分。消費時間はともに15分。

島井初段は▲8四歩△同歩▲8五歩の筋に気付いたが、松尾初段がそれを逃した。それに喜んで△5五歩と突いて、かえってまずいことになったと反省した。
38手目△5五歩では△5五角とする方が良かったようだ。

(蝶結記者)

松尾初段、今喜びのゴールイン。1day初優勝の瞬間です。心の中で高らかなガッツポーズをかざして激しいスプリント戦を制した。終局時刻は16時52分。

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銀杏記者がローマ法王とすると蝶結記者は異教徒教祖、

銀杏記者が懐石料理とすると蝶結記者はかつめし、

銀杏記者が銀座とすると蝶結記者はアキハバラ

と5月1日の記事で書いたが、本当にそう思う。

このような面白い企画は、またやってほしいものだ。

リコー杯女流王座戦の林葉直子さん

先週の土曜日に行われた「リコー杯女流王座戦」アマ東日本予選大会 では、小山田友希さん(岩手)、飯野愛さん(東京)、中澤沙耶さん(愛知)、飯田梨絵さん(埼玉)、室谷早紀さん(大阪)の5名が決勝トーナメントを突破し、1次予選への出場が決まった。

リコー杯女流王座戦中継ブログ

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大庭美夏女流1級は、決勝トーナメントの決勝で惜しくも敗退。模様の良い将棋だっただけに残念だ。

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組み合わせの関係もあっただろうが、渡部愛ツアー女子プロ、小野ゆかりさんなどの強豪も決勝トーナメントを突破することができなかった(二人とも女子アマ王位の中澤沙耶さんに敗れている)。

ここ数年でアマ女流の実力が全体的に上がってきていることは確実なようだ。

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林葉直子さんは午前の予選で1勝2敗、決勝トーナメント進出には至らなかった。(2勝で決勝トーナメント進出、2敗で失格)

まだ体調が回復していないのかと心配したが、いろいろと調べていくと、そうでもないことを知り、ホッとするとともに嬉しくなった。

女流王座戦の企画・推進をした株式会社リコーの馬上勇人さんのtweetより。

great_umakun 馬上 勇人

林葉さんがとても楽しそうに指しているのをみてなんだか嬉しくなりました。最後は必勝の局面から相手の駒をとろうとしてとれなくて切れ負けになってしまいました。厳密には時計を押せばセーフだったと思います潔く負けですねといった姿にとても好感がもてました。また参加してくれれば嬉しいです。 5月1日

馬上勇人さんのブログ→リコー杯女流王座戦アマチュア東日本予選

スポーツ報知の記事→林葉直子さん予選敗退…将棋女流王座戦

3局目は、必勝の局面で時間切れに気付かず反則負けをしてしまったようだ。

たしかに、女流王座戦アマ東日本予選大会の4日前に、林葉さんと最近将棋を指したアマ強豪の方が「林葉さんの最も大きな懸念材料は対局時計だ」と話していた。

どちらにしても、林葉さんは非常に惜しかったが、時間切れに気付かずに予選敗退というのも林葉さんらしい。

当日の様子は林葉さんのブログにも書かれている→時代

林葉さんにも徐々にエネルギーが戻ってきているようなので、今後の活躍を楽しみにしたい。

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昨日行われた里見香奈女流三冠の奨励会1級編入試験は、里見女流三冠の1勝1敗となり、最低でも2級での奨励会編入を確定させた。

対 加藤桃子奨励会2級(16才)戦 ●

対 伊藤沙恵奨励会2級(17才)戦 ○

第3局目は、5月21日に行われる。〔対 西山朋佳奨励会4級(15才)戦 里見女流三冠の香落ち〕

里見香奈女流名人・女流王将・倉敷藤花、奨励会1級編入試験の結果

トラキチ棋士

トラキチな棋士の話。

近代将棋2003年9月号、池崎和記さんの「関西つれづれ日記」より。

 甲子園球場で阪神-横浜戦を観戦。谷川王位、井上八段、本間五段夫妻と一緒で、僕以外はみんなトラキチ、つまり熱烈なタイガースファンである。

 いや、僕も一応、阪神を応援しているのだが、野球の知識はほとんどないし、また選手の名前もろくに知らないから、こんなの、ファンとは言わないだろう。それでも昔、阪神の応援に行ったことがある。掛布や真弓がいたころだから相当に古いけど、優勝した年ではなかったような気がする。

 関西の阪神ファンは基本的にやかましい。もとい、元気がありすぎる。それは例えば井上八段や本間五段のように、ふだんおとなしい人でも、ヒットが出たり相手選手がエラーしたりすると、すぐ立ち上がって「よっしゃ!」だの、「やったあ!」だの、「あほんだら!」だのと、別人のごとくわめき散らすのを見てもわかる。

 ところで谷川さんは例外で、前記のような場面でもほとんど動作に変化がない。立ち上がることはないし、絶叫することもない。静かに戦況を見守るという態度で、早い話が将棋の対局中のようにレーセイなのだ。

 今年の阪神は鬼神のようで、この日も2-3で迎えた9回裏、無死満塁でサヨナラ三塁打が出て、劇的な逆転勝ちを収めた。このときだけは谷川さんも立ち上がって隣にいた全然知らない人と握手したりしていたが、それでも奇声を発することはなかった。

 野球観戦のあとは球場近くの居酒屋で祝勝会。最初から最後まで阪神-横浜戦の感想戦で、みんなよくしゃべること。将棋界でも例えばタイトル戦の終局直後などは、これくらいにぎやかにやってもいいのにな、と思った。

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この記事の年、阪神タイガースはセリーグ優勝を果たす。

阪神タイガースの選手やスタッフがよく将棋を指すという情報を得た関西将棋会館ホームページスタッフは、選手会への将棋盤・駒の寄贈を企画し、翌年の5月、谷川浩司王位・棋王と井上慶太八段が日本将棋連盟を代表してタイガース選手会へ将棋盤・駒を寄贈した。

阪神タイガース選手会へ将棋盤・駒を寄贈

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私が生まれ育った仙台は、少なくとも私の高校生時代までは、巨人ファンであることが至極当然な土地柄でだった。

巨人が嫌いだという人がいれば、かなりな変人か危険思想を持つ人なのではないかと思われてしまうほど。

当然、私も大の巨人ファンとして育った。

阪神は当時、巨人の宿命的ライバルと言われていた。「巨人の星」でも、星飛雄馬が巨人で、花形満が阪神だった。

当時の阪神で思い出す選手は、村山、バッキー、小山、辻、元屋敷など。

(後年聞いた話では、北海道と東北は1970年代までは巨人ファン率90%を超していたという説があるという。現在では札幌に日本ハム、仙台に楽天があるので、巨人は大きな票田を奪われたことになるのかもしれない)

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長島、王が選手を引退した頃から私は野球には興味が無くなっていくが、他の球団を応援する理由もないので、相対的には巨人ファンという時期が続いていた。

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1985年11月2日(土)、長年低迷を続けていた阪神タイガースが日本シリーズを制し、日本一となった。

この日、私は六本木の飲茶料理の店で、友人たちと3人で飲んでいた。

初めて行く店だった。

この飲茶料理店は大手食品メーカーが後援している人気のある店だったが、閉店に近い時刻になると客席は私たちと別の席の二組だけになった。

品の良いロマンスグレーの店長がニコニコした笑顔で奥から出てきて、私たちに話しかけてくる。

「今日、タイガースが優勝いたしまして。よろしければ一緒に”六甲おろし”を歌っていただけませんか」

阪神が優勝したことをこの時はじめて知った。元・熱烈巨人ファンとしては”六甲おろし”を歌いのはかなり不本意だが、郷に入れば郷に従え。

「は、はい、、、ぜ、、ぜひとも」

別の席のお客さんが私たちの席へ集まってくる。

よく見ると黄色と黒のタイガース応援グッズを持っている紳士たちだ。店長の友人グループなのだろう。

”六甲おろし”の歌詞は知らないが曲は聞いたことがある。合わせて歌っていればどうにかなる。

「六甲おろしに颯爽と  蒼天翔かける 日輪の・・・」

3番までのフルコーラス。

少しだけ阪神ファンの気持ちが理解できたような感じがした。

歌が終わったあと、店長は、

「お邪魔をしてしまって申し訳ありませんでした」

と言って、その後、

「これは、歌っていただいたお礼です」

と、桃饅頭を出してくれた。

女性もいたのでスイーツ系の桃饅頭だったのだろう。

かえってこちらが恐縮したものの、タイガースファンの底力を見せつけられた日だった。

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歓喜したタイガースファンによって道頓堀川にケンタッキーフライドチキンのカーネル・サンダース像が投げ入れられたのは、この日ではなく、リーグ優勝を果たした1985年10月16日のことだった。