阪田流一手損△2二飛戦法

将棋世界2002年10月号、内藤國雄九段と谷川浩司九段の対談「われら阪田三吉の系譜に感謝と誇り」より。

内藤 私が、阪田さんが優しいなあと思うところはね、大事なお客さんには、たとえば角落ちで初手△2二飛と回るんです。「これが阪田流や」と言って。でも、角落ちで2二飛は絶対に上手不利なんです。下手の角筋に行くなんて棋理からいうて話にならんわけ。だから、作戦負けにちゃんとなっとるわけや。そこから一生懸命指して、下手がまずい手を指さなかったらそのまま自然に負けになる。そこが阪田さんの頭のいいところでね。サービス精神の感覚がやっぱり並じゃないという気がするね。

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角落ちで初手△2二飛とは、一手を使って初形を逆にする手。

たしかに素晴らしいサービス精神だ。

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南禅寺の決戦、阪田三吉八段-木村義雄八段戦で、阪田三吉は2手目に△9四歩と指している。

やはり、△9四歩は、「木村相手に、初形が不利な条件で勝ってみせる」という気概の表れだったのかもしれない。