森下卓五段(当時)「なんと言いましても”織田信長”です」

将棋マガジン1988年2月号、森下卓五段(当時)の天王戦決勝自戦記「歩のない将棋はツラ過ぎる」より。

 六十二年十二月五日、第三回天王戦決勝を、羽生善治四段と戦うことになりました。羽生四段との公式戦は、過去三戦して二勝一敗。

(中略)

 決戦の舞台は長野、長野は私にとって、初めての地でもありました。

 長野は先入観で寒いと思っていたのですが、実体験では、それ程ではありませんでした。

 長野には呉越同舟? 上野発の特急あさま号で向かいました。車中、様々な話で賑わいましたが、途中、上田が真田幸村の里ということもあって、戦国武将の話など盛んでした。

 戦国武将と言えば、去年は伊達政宗、今年は武田信玄だそうですが、私は織田信長、なんと言いましても”織田信長”です。

 織田信長の凄さ、魅力は、緻密で鋭い頭脳、人材育成など、あり過ぎて困るぐらいですが、私は、戦国乱世を切り拓いて、天下統一の覇権を打ち立てた織田信長の気魄とパワー、歴史を拓いた信長の使命感と迫力が最高の魅力です。

 さて、羽生さんはと聞けば、信長はお気に召さぬとか。

 では誰かと問えば、ウーンと誤魔かされてしまいました。

(以下略)

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私が子供の頃、最初に好きになった歴史上の人物は、織田信長だった。

当時のNHK大河ドラマが「太閤記」だったからだ。

その翌年に、源義経を好きになった。

NHK大河ドラマは「源義経」。

テレビに影響されやすい子供だったのだろう。

源義経の鎧や兜のプラモデルを買ってもらったほどだ。

その翌年の大河ドラマは「三姉妹」。

幕末から明治維新にかけてのドラマで、子供心に興味が持てなかったのか、明治維新を好きになることはなかった。

その後、高学年になるとともに大河ドラマは見なくなってしまう。

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大学3年の頃、先輩と飲んでいる時に、私は「歴史上の人物では平重盛が好きだ」と話した記憶がある。

平重盛は平清盛の嫡男。 文武両道の名将でありなおかつ皆に慕われる人格者で、「驕る平家」の中にあって唯一、バランス感覚を持っていたと言われている。

小学校の3年から大学3年までの12年間のいつ頃から平重盛を好きになったのか、今となっては思い出せない。

それにしても、20歳とは思えない渋い好みだ。

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森下卓五段(当時)が書いている大河ドラマ「独眼流政宗」は、大河ドラマ史上最高の視聴率だった。

私も仙台出身なので、毎週見ていた。

脚本はジェームス三木さん。

ジェームス三木さんは、「澪つくし(朝の連続テレビ小説) 」、「八代将軍吉宗(大河ドラマ)」 、「葵 徳川三代(大河ドラマ)」、「西遊記」など、数多くの脚本を手掛けている。

趣味は将棋で、文壇将棋大会にも参加をされている。

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ジェームス三木さんの作品には、鈴木英春さんをモデルにしたと言われる「煙が目にしみる」(1981年 NHK)もある。

テレビドラマデータベースに記載されている解説より。

将棋連盟奨励会の対局で、根本信吾三段(川谷拓三)は2連敗を喫した。新吾は師匠のもとに帰る気にもなれず、何のあてもなく列車に乗り、山梨県のとある温泉宿にたどりついた。連敗続きの棋士生活と、さらに私生活では婚約同然であった内堀香子(田坂都)を弟弟子に奪われ、人生最大のピンチに陥っていた。そんな時、新吾は同じ宿にいたフラメンコのフロアダンサーの宮坂千草(根岸季衣)と出会う。今は亡き川谷拓三が、中年男の心模様をしみじみと演じるNHK銀河テレビ小説。【以上、ホームドラマチャンネル広報資料より引用】

私は、「煙が目にしみる」を見たことはないのだが、2005年にCSで放送されている。

機会があれば、ぜひ見たいドラマだ。

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「煙が目にしみる」主演の、故・川谷拓三さん。

バトルロイヤル風間さんは、川谷拓三さんの著書『3000回殺された男―拓ボンの体当たり映画人生』の表紙を描いている。

3000回殺された男―拓ボンの体当たり映画人生
価格:¥ 1,223(税込)
発売日:1991-09