元・近代将棋編集長の中野隆義さんから、一昨日亡くなられた永井英明さんの思い出のコメントをいただいた。
永井英明さんに初めて会ったのは、四十年ほど前になるでしょうか、関東大学将棋連盟の幹事をしていました私めが、学生将棋の大会結果や原稿やらを当時小田急線の豪徳寺駅近くにあった近代将棋編集部に持っていったときのことだったと思います。
それまでに何度か同様の用事で編集部に出入りしていました私めは、密かに近代将棋に入れてもらいたいと思っておりまして、この機を逃してなるものかとばかり、いきなり永井さんに「近代将棋の編集部に入れてください」とお願いしたのでありました。いきなりのお願いに永井さんはさすがに少し驚いたようでしたが、やんわりと丁寧に応対してくれまして、「あなたなら、もっといいところに就職できるでしょうに」とは言われましたが、どうもはっきりと断られてはいないようだなと勝手に判断した私めは、さっそくまずはアルバイトでお願いすることにして、そのまま翌年の春から首尾良く正社員の道へとなだれこんだのでありました。
バイトをしているときに、豪徳寺駅前の住吉(居酒屋です)にて、森敏宏編集長から「中野君。永井社長はね、去る者は追わず来る者は拒まず、なんだよ」と教えてもらったときは、やったーっ、下手なてっぽも一発で当たることがあるんだ、ってなもんで、嬉しさのあまりついつい大飲みしてしまいました。
入ってしばらくして永井さんに教えてもらったことで今でもしかと心にあるのは「怒っている人に正論を言ってもダメですよ」です。どうも私めは、今ではそうでもありませんが、若いころはかなり理屈っぽいところがあったようで、正しいことが百パーセントの正義である的な脳味噌をしておりました。永井さんはそんな私をしっかり見ていてくださり、的確なアドバイスをしてくれたのでしょう。
あ、それと「生きていれば、必ずいいことがありますよ」というのも。
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中野さんにとっての、永井英明さんの思い出の序盤。
「怒っている人に正論を言ってもダメですよ」は、ものすごくインパクトと説得力のある言葉だ。