森けいニ九段「いいよ、かかってきなさい」

将棋マガジン1995年3月号、鹿野圭生女流初段(当時)の「タマの目」より。

 順位戦の後、森けいニ九段と小林健二八段が少しお酒を飲んで棋士室に戻ってきた。

小林「さあやろか」(といって駒を並べはじめる)

森「じゃあ15分切れ負けね」

小林「10秒将棋にしません?」

森「いや、15分切れ負けがいい」

小林「しょうがないなあ。じゃあ、―ジャンケンポン―私の先手ね」

―対局中―

小林「チャー、相振りかいな。これはこの間久保君(四段)に教わったんや」

森「いいよ、かかってきなさい」

小林「森さん、ところでこれ、一局なんぼ?」

森「一万円」

小林「え???」

森「一万円」

小林「ひ、ひゃく円にまけて?」

―ギャラリー爆笑―

森「ダーメ」

小林「じゃあ200円……500円」

森「ダーメ。一万円」

―数分後―

小林「森さん、これ一局一万円やったけ?」

森「ン? 100円だよ」

―ギャラリー大爆笑―

小林「チャー」

―またまた数分後―

小林「森さんこの将棋100円だよね」

森「何言ってんの一万円だって」

小林「チャー、変動相場制かいな」

 結局、1勝1敗で事無きを得たようである。

小林「森さん、次何やる、囲碁にする? キャッチボールにする?」

―ウッ…ク。子どもだ…―

—–

この日はB級1組順位戦(森けいニ九段-小林健二八段戦)が行われており、小林八段が勝っている。

感想戦終了後、飲みに行ったあとの出来事。

この頃19歳だった久保利明四段の名前が会話の中に出てきているところが興味深い。

「チャー」は小林健二九段の口ぐせで、「アチャー」のアの発音が限りなく省略された言葉だ。

—–

チャーというと思い出すのがChar。

大学2年の頃、憧れていた女子大生の子が、「私の好みは絶対にChar。Charって考えられないくらいの美男子なんだからね」と話すのを聞いて、ものすごい敗北感に襲われた記憶がある。

張り合うとかそういうことでは当然なく、あまりのベクトルの違いに呆然としたということ。

今考えればほとんど気にしなくていいような会話だが、このようなことに一喜一憂するのが良い意味でも悪い意味でも若さなのだと思う。

    

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