将棋マガジン1992年8月号、深浦康市四段(当時)の「リレー講座 私のマル秘上達法」より。
読者の皆さん、こんにちは。
編集部からの依頼で、「上達法」を書いてくれとの事。
私は正直困りました。こちらが「上達法」を教えて欲しいぐらいです。迷った末、引き受ける事にしました。
まず上達の一方法として浮かぶのが実戦でしょうか。これは10秒将棋に限ります。番数をこなして実戦勘を養います。できれば集中して20番も30番も指すのがベスト。時には50番をも目指します。私も級位者の頃はよくやりました。
実戦譜を並べる事も忘れません。プロの最新棋譜はもちろんの事、できれば江戸時代の棋譜も抑えておきたい。
終盤力は詰将棋。図巧、無双は挑戦すべし。ただ難解なので有段者になってからでも遅くありません。級位者の頃はやはり詰将棋パラダイス、定番です。
将棋は体力、とも言います。早朝ジョギングを始めましょう。夏場は5時頃起きて、ほっぺをたたき外に出ます。最初は眠いでしょうが、これを続ける事によって精神面も強くなります。そして朝日に向かって叫びます。
「俺はプロになるんだ」……と。
おっと、これは「プロの上達法」でした。(奨励会の方は参考にして下さい)
アマチュアの方は当然こんな事をする必要はありません。理想は楽しみながら強くなる事で、あせらない事が肝心です。
ただ、いつも漫然と将棋を指すのではなく、目的意識を持つ事が上達するコツだと思います。
アマチュアの上達法、という事で私が将棋を始めた頃を思い出しながら書いていきたいと思います。
(以下略)
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深浦康市九段の奨励会時代は非常にストイックだったといわれる。
この原稿が書かれた頃も、それは継続されている。
深浦四段と鈴木大介三段の有名な会話も、この頃と思われる。
深浦「ダイチ君、TVゲームの何が面白いの?」
鈴木「そりゃ(中略)主人公のレベルを上げて強くしていくのが…」
(不思議そうな顔で)
深浦「でもゲームでいくらレベルを上げても、やってる本人のレベルは上がらないでしょ」
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たしかに、上記のような鍛錬を続けていたら、テレビゲームに対してそのように感じるのは自然だと思う。
プロへの道は厳しい。
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ちなみに、アマチュアの上達法は、「ライバルを持つこと」。
好敵手がいれば切磋琢磨できて、上達のスピードが上がるということだ。
これも、深浦九段の10歳の頃の経験より。
深浦九段は10歳で将棋を覚え、2年後には県代表クラスの実力となっている。