電王戦は、コンピュータソフト側が3勝1敗1分けと勝ち越しを決めた。
この結果に、私は特に衝撃は受けていない。
いつかはコンピュータソフトが勝つことになる訳で、たまたま今年、そういうことになっただけのことだと思う。
また、野球の長嶋選手や王選手も、新人ピッチャーに対する初打席は三振に終わることがあったように、コンピュータソフト対策の準備が万全ではない状態のプロ棋士がソフトに敗れることは大いにありうることだ。
本番と同じバージョン・条件のソフトを事前研究すれば、プロ棋士はソフトに負けないと思う。
とはいえ、ハードウェアあるいは並列処理の進歩が著しい中、コンピュータにプロ棋士が完全に敗れる時がいつか来ることは確実だとも思う。
私は、人間対コンピュータの図式を、古代ローマ帝国の円形競技場で行われていた剣闘士対猛獣の戦いのように感じていた。
人間が勝ってもニュースにはならないが、人間が猛獣に食われれば大ニュースになる。
そういう意味で、私は以前から人間対コンピュータソフトの戦いは、プロ棋士にとってはハイリスクローリターンの世界であり、大反対という意見だった。
今も、それは変わっていない。
大山康晴十五世名人の「人間が負けるに決まってるじゃないか」という意見と同じだ。
今回の電王戦が盛り上がったのは、人間とソフトが作り出す棋譜に対してではなく、プロ棋士が必死で戦うその姿・ドラマに多くの人が感動したのだと思う。
第3期の電王戦が開催されるとしたら、もっとエンターテインメント色の強い企画にしてほしいものだ。
どちらにしても、将棋は人間対人間のドラマが最高であり、その魅力は永遠のものだと思う。