近代将棋1991年11月号、41ページの1頁全面モノクロ広告より。
将棋通信センター
『Q2将棋通信道場』
=東京学生女流会=
8人の美人モデル風の女性の写真
こんな私達です。 ●常時80名~120名所属
=システム=
◯女性棋士が対話方式で直接対局します。
(Tel)0990-XXX-XXX お気軽にお電話下さい
12秒10円 (地域によって異なります)
◯勝利ポイント制により豪華景品贈呈!!
=営業時間=
昼12:00~PM11:30(12:00終了) 年中無休
※女性将棋オペレーター随時募集中、初心者歓迎!
親切丁寧指導致します。
◯◯情報サービス(株)将棋センター事業部
問合せ [E:telephone] 03-XXX-XXXX 東京都豊島区
—–
ダイヤルQ2の仕組みを活用した、女性(女子学生?)が対局相手になってくれるサービス。
12秒10円ということは、1分50円。一局に30分かかったとして1,500円。
「ハーイ、こちら東京学生女流会将棋通信道場でーすっ」
「あ、あのー、、一局お願いしたいんですが・・・」
「お待ちしてましたーー。今日は私、モモコがお相手させて頂くわねっ!」
「あ、、あのー、この間指してくれたメグミちゃんはいないんですか?」
「ごめんなさーい、メグミちゃんは今、大学の後期試験があってお休みなの。私じゃダメ?」
「い、いや、、そんなことはありませんです。モモコさんも声が素敵で」
「ありがとー。それじゃあたしが先手でいい?」
「は、はい」
「じゃあ、▲7六歩」
「△3四歩」
「うわーー、お客さま、つよそー、、▲2六歩」
「△4四歩」
「うーん、あたしをこんなに困らせちゃイヤッ、、▲4八銀」
「△3二飛」
「うわー、三間飛車やる男の人って格好いい人が多いんだよ。私たちの間では評判なんだから。▲2五歩」
(以下略)
のような感じで進むのだろうか。
どちらにしても、女性オペレータの後ろには、将棋の強い男性が控えていたのだろう。
—–
ダイヤルQ2は1989年に開始された電話による有料情報サービスの仕組み。
当初は、ニュースや電話相談のような一般サービスに利用されることが想定されていたが、成人向け情報提供業者が猛威を振るうこととなった。それらの業者は上限価格の3分300円という料金設定がほとんどだった。
それから考えると、3分150円の東京学生女流会将棋通信道場は良心的な単価だったのかもしれない。
何より、女性オペレータの人件費、後ろに控える将棋強豪などの人件費を考えると、なかなか利益を上げることが難しいと思う。
まるまる1時間の対局があったとしても売上は3,000円。女性が1時間付きっきりになるので、3,000円の中から女性の時給、後ろに控える男性の時給の何割を支払わなければならない。
また、稼働率が100%というわけではないので、空き時間の人件費も売上から捻出しなければならない。
稼働率が生命線のビジネス。
なかなか難しい商売だったと思う。
—–
とはいえ、この将棋通信道場にお客さんを引きつけ、対局が終わりに近づいた頃(もちろんお客さんに勝たせる)、「お客さま、将棋じゃないけれども、あたしがバイトしているすっごいところがあるの。番号は0990-XXX-XXX。電話してね。待ってるね」と、成人向けQ2へ誘導する手筋も考えられる。
・・・考えられるが、あまりにも遠大な構想なので、現実的でもない。
成人向けQ2で大儲けしていた会社の経営者が将棋好きで、このようなサービスを趣味で始めたのかもしれないし、本当のところはやはり分からない・・・