近代将棋1991年6月号(升田幸三実力制第四代名人追悼特集号)、故・永井英明さんの編集手帳より。
升田先生とはNHK杯戦の解説でも何回もごいっしょしました。
仕掛けたところで、先生は6、7枚の駒をはぎとって、結果の局面を並べる。途中の指し手がないからファンにはわからない。それで指し手を聞きながら手をもどしたり、「この局面はどっちが優勢ですか」と聞くと、「もう、終わっておる」なんて、言われたり。
解説の途中で8分以上もトイレにいかれたり、思い出はつきません。先生の解説は人気抜群でした。
ご冥福を祈念いたします。
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近代将棋社長だった永井英明さんは、1981年から1990年までNHK杯戦の聞き手を務めていた。
あの時代、もっとNHK杯戦を見ておけばよかったと、今になって思う。
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升田幸三九段(当時)の解説は、とにかく面白かった。
「僕ならこうやる」と、現局面から先の手順を示してくれる。
また、その指し手が升田流なので、ファンにとってはたまらない瞬間でもあった。
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1971年のNHK杯戦、関根茂八段-大山康晴名人戦。
解説が升田幸三九段。
このとき私は中学生だったが、この放送をリアルタイムで見ていた。
大山名人が見事な捌きで、飛車を成る。
その手順に対し升田九段は、「僕ならこう指す」と別の手順を示す。
どちらも圧倒的に優勢となる手順。
「ステーキとしゃぶしゃぶ、どちらを選べばいいんだ」、と同じような、贅沢な気分になれた記憶がある。
どちらの手順も美味しい。
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昔のNHKの番組なのだろう。
非常に貴重な映像がアップされている。