将棋駒駅旅情

将棋世界1990年8月号、「豆知識アレコレ」より。

 十数年前、旅行ブームの折から「幸福-愛国」間の切符がマニアの間で有名になり、ちょっとしたお祝いの贈り物になるなどしたことがあった。

 旅行雑誌では変わった名の駅特集などが組まれることがあるが、将棋の駒名が入った駅(JR)を捜してみると、王、玉から歩まで、なんと150以上もの駅があった。

 一番多かったのが金、全体の3分の1近く、続いて馬、玉の順で、最も少なかったのが歩で2駅。どこだかおわかりになりますか?四国、高松を始発駅に南北を縦走し、高知を経て窪川(森九段の出身地中村には、ここから土佐くろしお鉄道に乗りかえ)までの土讃本戦のほぼまん中にある「大歩危・小歩危」という駅がそれ。おおぼけ、こぼけと読むが、なんとなくニュアンスが伝わってくる感じの景勝地である。

 愛知県豊橋市を起点の飯田線は、途中、出馬(いずんま)・中部天竜(てんりゅう)・金野(きんの)・天竜峡(てんりゅうきょう)ときて、おまけに駒ヶ根(こまがね)という駅も通過する。

 眼下に天竜川の絶景をながめながらローカル線の旅を楽しめるところだ。

 将棋駒の駅に旅情を寄せる、またひとつ、違う旅を楽しめるだろう。

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あれは1992年のことだったか。

六本木のキャバクラで顧客を接待した。

飲んでいるうちに山手線ゲーム(山手線の駅名を次々と答えていき、5秒以内に答えられなかった場合は罰として一気飲み)をやろうということになった。

なかなか盛り上がりる。

男性3人、女性3人。

楽しく時は過ぎていく。

過ぎていく。

キャバクラは時間制の料金体系。

季節は夏。

「そういえば、あそこに御札が貼ってあるね。このような店では珍しいよね」

「・・・実はこのお店、幽霊が出るらしいんです。あの御札の位置から対角線上に・・・ほら、あっち側の壁にも御札があってあるでしょ」

「エッ・・」

「この店で写真を撮ると、不思議なものが写るのよね。今、写真持ってくるね」

(1分後)

「これ・・・」

10枚ほどのポラロイド写真。白いもやのようなものがかかった写真、赤い不思議な光が紛れ込んでいる写真など。

白いモヤモヤはエクトプラズムと呼ばれるものかもしれない。

「御札を貼っても、まだ怪異現象は続いているようなんです」

・・・気分転換に、今度は47都道府県ゲームをやろうということになった。

楽しく時は過ぎていく。

過ぎていく。

キャバクラは時間制の料金体系。

気がつくと午前3時・・・

何時間この店にいたのだろう。

会計をすると、かなりものすごい料金になっていた・・・

それ以降、私は山手線ゲームは二度とやらないようになってしまった。