過激な編集企画

将棋世界1992年1月号、先崎学五段(当時)の「先チャンにおまかせ」より。

 それは突然のことだった。某月某日、とある酒場にて、本誌新編集長のヨシオ氏と飲んでいたときのことだった。

 「先チャン、新年号から原稿書かない」

 なかば予想していた言葉だが、いざ言われてみると対応に困った。というのも、僕は、今年の5月、1年間の休筆宣言をしていたからだ。

 「でも、1年間・・・」

 「わかっとる、わかっとる」

 ヨシオ氏、身を乗り出して、角栄調になった。

 「事情はわかっとる。しかし、もう半年は過ぎた。人の噂も75日、君が休筆のことを書かなければ、誰も思い出さん。え~世の中なんてそんなもんじゃ。五十歩百歩というやろ。四捨五入とも。それにな、じつは、秘策の企画があるんや」

 「なんですか、また過激なこと考えているんでしょ。今月の大悪手とか、一流棋士の表と裏とか・・・」

 「ほらほら、その発想がアカンのじゃ。師匠も自戦記でゆうとるやろ。文章には愛がないとアカン。愛がないと」

 「愛のある企画というと、えーと、男と女がどうしたこうしたとか、若手棋士と歌舞伎町のホステスがホレホレヒレハレだとか・・・」

 「ブァッカ!(バカのこと)そうじゃないんや、愛とは、将棋ファンに対する愛情のことや。愛情とは接することや。接してもらさず。いや違うか。旅や。全国津々浦々を旅して、将棋を指すんや。それを書いたら、こらおもろうなるでえ」

 ヨシオ氏、完全な大阪弁になってきた。

 僕、大阪弁と話す女の子とちょっと付き合ったことがあって、これに弱いのである。なんとなく、ホナ、やりまひょか、という気分にさせられる。ここらあたりは、さすが新編集長である。

(以下略)

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先崎学五段(当時)とこの号から将棋世界編集長となった大崎善生さんとの会話。

「今月の大悪手」

「一流棋士の表と裏」

聞いただけでも恐ろしそうなタイトルだ。

恐ろしい。

あまりにも恐ろしい。

しかし、人気が出ること間違いなしの企画とも言える。

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そういう意味では、先崎学五段が言う「一流棋士の表と裏」とはニュアンスが微妙に異なるかもしれないが、高橋道雄九段が今年の3月から始めたブログ「みっち・ザ・わーるど」は、まさに、高橋九段の趣味(AKB48、漫画・アニメ・特撮など)の話題が数多く出てくるブログであり、1992年のこの当時から見れば、対局時の高橋九段からは全く想像がつかないような内容だ。

また、渡辺明竜王の「渡辺明ブログ」も、同じような意味で表も裏も書かれているブログで、奥様の「妻の小言。」が更に裏の部分(ぬいぐるみ好きなどの各種エピソード)を補強している形だ。

ネットの発達によって、コンテンツが面白い時代になっていることは間違いない。

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