微笑ましい桐谷広人六段（当時）

読む

2013.12.292020.05.24

将棋世界1992年2月号、大野八一雄五段（当時）の「公式棋戦の動き」の王位戦の項より。

　桐谷はリーグ入りの一番で中原に当たることが決まってからは実に嬉しそうであった。

　下の棋士にとって名人と指せるのは大きな幸せである。しかも、リーグ入りをかけた勝負を戦えるなんてそうあることではない。

　連盟に毎日のように顔を出しコピーをし棋譜を並べている桐谷は生き生きとしていた。

　「今度、名人に教えてもらえることになりました」。と館内で会う仲間一人一人に言って歩く姿には、ほほえましさすら感じさせられた。棋士の幸せとは、対局することなのだなぁと、当たり前のことだが改めて知った。

　桐谷は、コンピューター桐谷と言われているだけあって記憶力が非常に良い。

　この将棋は、何年何月に誰と誰で指された形と同じだ、等と平然と言う。

　人と話をするのが好きで、棋譜を並べながらその対局の模様まで描写して笑わせてくれるやさしく愉快な先輩。

　そんな桐谷であるから、名人を負かして男を上げてもらいたかった。残念だ。が、将棋では随分名人を苦しめた。

—–

テレビで多くの視聴者を癒し続けている桐谷七段らしいエピソード。

私の中では、今年の将棋界十大ニュースは、

１．渡辺明竜王防衛ならず、森内俊之名人が竜王復位（11月）

２．里見香奈二段、三段に昇段（12月）

３．渡辺明竜王、三冠王に（3月）

で始まるのだが、4位が、

４．桐谷広人七段、テレビなどで大人気（１月～）

と思っている。

昔から変わらない桐谷七段のキャラクターと現在の投資スタイル（リーマンショックの頃に、信用取引での頻繁な株式売買から株主優待を主軸とした株式取引へ転換）の組み合わせが絶妙だったことが、今年の桐谷七段の大ブレイクに結びついている。

将棋界にとっても、非常に素晴らしいことだと思う。

—–