将棋世界1994年9月号、神吉宏充五段(当時)の「対局室25時 in 関西将棋会館」より。
そ、それでは谷川王将のかっこええとこをご覧イタダコウ。対南の王座戦から。
6図はひねり飛車からの乱戦で、南が△9五歩と突いて、さあ攻めて来い!としたところ。谷川は動く。
6図以下の指し手
▲7四歩△同歩▲2二歩△同金▲6四角△7三銀(7図)
小刻みに動く谷川だが、果たしてこんなんで手になるのだろうか。ちょっと考えてほしい。
7図以下の指し手
▲4四飛△同歩▲6三角△3二玉▲8一角成△同飛▲7三角成(8図)
強引とも思える谷川の殴り込み。しかしどうやらこれで優勢らしく、南は抵抗らしい手も見せずに早々の終局になった。
(以下略)
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ひねり飛車は飛車を左翼に転回する形なので広義の振り飛車戦法と捉えることができる。
昔の入門書ではタテ歩取り戦法の名前が使われていたが、いつの頃からか、ひねり飛車と呼ぶのがメジャーとなってきた。
▲3六飛として後手の3四の歩を取るぞと言いながら、(後手が受けるので)実際に3四歩を取ることがほとんどないことからそうなったものと思われる
しかし、この一戦は南芳一九段が「どうぞ」と3四の歩を差し出したので、6図のような形となっている。
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6図からのこのような攻め方はなかなか思いつかない。谷川浩司王将(当時)の8図へ向かう手順が一直線で痛快に感じられる。
途中の▲2二歩のような手は、形を乱すことが主眼ですぐに直接的なご利益が出ることは多くないのだが、このケースでは玉が息詰まるような窮屈さとなっており、また▲3四桂など伏線もあり、▲2二歩の効果が超速で現れている。
「殴り込み」の表現がピッタリな攻めだ。