将棋世界1995年1月号、丸山忠久五段(当時)解説の第25回新人王戦決勝三番勝負第2局〔丸山忠久五段-郷田真隆五段〕「嬉しい初優勝」より。
―今回の新人王戦ですが、連勝中にかなり勝ち進んできましたよね。
「でも決勝戦第1局は連勝がとぎれた直後でしたよ」
―トーナメントは順調に勝ち進んできましたか。
「準々決勝の浦野さんとの将棋が大苦戦でした」
―対局や連盟にきてVS(練習将棋)をやっている以外の日は、ど過ごされていますか。
「ごろごろしています」(笑)
―でも、取りに来る棋譜の多さでは、若手の中でも一、二ですよね。資料室に◯◯さん1年分と言って取りに来るのは有名ですよ。まとめて50局ぐらい持っていきますが、全部並べているんですか。
「全部並べてる場合は、少ないです。さあっと目で追ってから適当に選んで並べます」
―普段は何時頃起きていますか。
「最近は遅いですね。なんにもなければお昼頃です」
―ところで今年はずいぶん対局が多そうですが。
「先月は、10局でした」
―研究会やVSはどのぐらいやられていますか。
「VSは週に2回ぐらいですね。研究会は、活動しているのは小野研だけですね。小野、高田、北島で月に2回ぐらいです」
(中略)
―今回の新人王戦を振り返って、連勝で終わりましたが。
「1局目を勝てたのが大きかったですね。2局目、気楽にやれたので。目標ですが。あまりたてない方なので。ずぼらな性格なんです」
―少し質問を変えて、今毎日どのくらい将棋をやっているんですか。
「VSだと、お昼頃来て6時か7時ぐらいまで、3、4局ほどやっています」
―平均5、6時間ですか。
「家にいる日はもっと少ないですよ」
―佐藤竜王が、一日7~8時間と言っていましたが。
「あれは凄いですね。僕は、目標とか作ったりしないので1局、1局指していければいいですね」
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1999年に刊行された「将棋これも一局読本」の山岸浩史さん構成の「スペシャル・トーク 矢内理絵子女流三段VS碓井涼子女流二段」の中に次のようなやりとりがある。
―プロ棋士でいいなあと思う人は?
矢内 私は丸山(忠久八段)ファンです。あの、ふわーっとしていて優しそうなところが。それから最近は佐藤(康光)名人も素敵に思えてきました。
碓井 一度お仕事をご一緒したときにとても優しくしてくれた杉本(昌隆五段)先生のファンです。でも丸山ファンでもある。この間さあ、連盟に棋譜をコピーしにいったら、使い方がわからなくて、ウロウロしていたわけ。そうしたら丸山先生がニコニコしながら無言で近づいてきて、ぱーっとコピーしてくれて、またニコニコしながら去っていった。
矢内 いいよねえ(笑)
碓井(現・千葉)涼子女流初段(当時)が困っているところを助けた丸山忠久八段(当時)。
この時も丸山八段は、資料室に棋譜を取りに来て、コピーをさっきまでしていたのかもしれない。
それにしても、格好いい登場のしかたと去り方である。
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「◯◯さん1年分」とは、具体的には、
「羽生さん1年分」
「森内さん1年分」
「佐藤康光さん1年分」
「郷田さん1年分」
「藤井さん1年分」
のような使われ方。
破壊力というか、とてもインパクトがある。
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1年分というと思い出すのが、渡辺明二冠宅に届いたJT杯勝利者副賞のJT飲料1年分。
1年分とは具体的にどれくらいの量か、私にとっては初めて知ることができた記事だ。