郷田真隆五段(当時)「お客さんに見られている方が、僕はいいんじゃないかなと」

将棋世界1995年2月号、郷田真隆五段(当時)のJT将棋日本シリーズ’94決勝戦〔郷田真隆五段-米長邦雄前名人〕自戦解説「心地よい緊張感」より。

JT将棋日本シリーズ’94決勝戦。将棋世界1995年2月号より、撮影は中野英伴さん。

 JT将棋日本シリーズは、お客さんの前で指すのでいい緊張感があって、ちょっと特別な感じがします。最近思い始めたのですが、お客さんに見られている方が、僕はいいんじゃないかなと(笑)。

 会場の空気に緊迫感があるし、お客さんの反応、例えば、どよめいたり、いい手を指すとオーッとなるじゃないですか。そういう熱気が伝わってくる。それが結構合ってるんじゃないかと思いますね」

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郷田真隆五段(当時)は、1993年度から3年連続でJT将棋日本シリーズ優勝を果たしており、この談話は2年連続優勝をした時の自戦解説で語られたもの。

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郷田真隆九段は、第1期銀河戦(1992年)で優勝、第1回大和証券杯ネット将棋・最強戦(2007年)で優勝と、新しく始まった棋戦の第1期に優勝をしているという傾向もある。

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昨日の王将戦第7局で郷田真隆九段が渡辺明王将を破り、王将位を獲得した。

郷田真隆王将は、初めてのタイトルが1992年の王位、以降、1998年と2001年に棋聖、2012年に棋王、そして今回の王将が5回目のタイトル獲得。

こうやって見ると、郷田王将は、以前は夏に行われるタイトル戦と縁が深かったが、ここ数年は、2012年3月の棋王位獲得、昨年3月のNHK杯戦優勝、昨日の王将位獲得と、3月に決着がつく棋戦で結果を出していることがわかる。

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昨日の終局後のインタビューで郷田王将は、「この勝利を誰に一番報告したいですか」という質問に、「一番は母に。ずっと応援してくれていたので」と答えている。

近代将棋1992年12月号の巻末グラビア「郷田新王位の就位式」では、1992年10月12日に日比谷「松本楼」で行われた王位就位式の様子が伝えられており、郷田王位(当時)がご両親と一緒に写っている写真が掲載されている。

郷田王位の左側に2007年に亡くなられたお父様。写真には写っていない誰かと話をしているところのようだ。真ん中に正面を向いた郷田王位。郷田王位の右側に、郷田王位を見つめるお母様。

お母様は本当に優しい表情をされている。

郷田王将は、心の中で、お父様にも今日の勝利を報告をしていることだろう。

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郷田王将のお母様のこと、親友の先崎学五段(当時)のことなど→ 「郷田真隆”遅れてきた青年”の本番」

郷田王将のお父様のこと→郷田真隆王位(当時)「筋が悪くなるから、嫌だ」