「先崎君、君は一体何をしたんですか」

将棋世界1988年7月号、駒野茂さんの「奨励会三段リーグレポート」より。

 ゴールデンウイーク、読者の方々は、どのように過ごされましたか。

 家族サービスで旅行、それとも寝ていたばかりとか?

 奨励会員も、この時は色々計画を練っていたようです(計画を立てても、意味のない人もいるが)。

 やはり旅行に行ったというのが一番多く、あとは室内ゲームにいそしむ。例えば、パチンコとか、麻雀。中には、渋谷駅前に一人立ち、男らしく勝負を挑んだ者(女性に声を掛ける)もいたようだ。

 気合い乗り一番というのがあった。北島三段、豊川二段、盛1級の3人は、自転車(スポーツ車)で、熱海→(船)→伊豆大島→(船)→熱海→東京というハードな旅行?をして来た。途中、パンクというアクシデントなどに見舞われ(財布の中身も同様)北島、次いで盛がリタイア。

 一人ガンバッたのが豊川。何とか東京にたどり着いた時は、1日何も食べなかったため、ふらふらだったと。

 もう一つ。滝六段、浦野五段、佐藤康四段、先崎四段、高田三段、田畑三段、小倉三段の7人が、山梨県清里に遊びに行った時の話だ。

 宿泊所は別荘なので、食事は自分達で用意しなければいけない。それでご飯を炊くことになったのだが、その役目を先崎四段が受けた。

「大丈夫か?炊き方が分かるか」と滝六段に言われても、「大丈夫です」と自信満々。電子ジャーだから、水加減さえ間違えなければちゃんと炊ける筈。

 ところが、しばらくして電子ジャーを見ると、何と!カマから飯があふれているではないか。

「先崎君、君は一体何をしたんですか」(滝)。

「いやー、沢山食べたかったから、目盛りの最上のところまで、米を入れて(8合炊きのカマで、11合以上)みたんです。やっぱり駄目ですか」

「当たり前です」。

 結局、このご飯は固くてこのまま食べられないため、半分をチャーハン、もう半分を雑炊にした。しかし、チャーハンの方は水をコップ4杯程入れてもご飯が軟らかくならなかったので、こちらはあきらめることにした。

「急に食欲がなくなりました」 雑炊を前にして、先崎四段がこう言ったもんだから一同がムカッ。

 この後、先崎四段がどうなったかは、言うまでもない。

 将棋指しが旅行をすると、何かと面白い出来事がついて回るようです。

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現在の滝誠一郎八段、浦野真彦八段、佐藤康光九段、高田尚平六段、小倉久史七段、田畑良太指導棋士六段、そして先崎学九段による旅行。

「この後、先崎四段がどうなったかは、言うまでもない」と書かれているが、どのようになったのだろう。

  • 失敗したチャーハンを食べさせられた
  • 麻雀やゲームで狙い撃ちをされた
  • 肝試しに一人で行かされた

などが考えられるが、なかなか展開を読むのが難しい。

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この文章を読んだ時、米1合は茶碗1杯分なので、若い人が中心だから1人1.5合としても7人分で10.5合、先崎四段(当時)が電子ジャーに米を11合入れたのは、気持ちとしてはとても理解ができる、と思っていたのだが、調べてみると米1合は茶碗2杯分とのこと。

世の中、あらためて調べ直してみるべきことは多いのかもしれない。私の場合だけかもしれないが。