近代将棋2005年7月号、故・池崎和記さんの「関西つれづれ日記」より。
5月某日
ホテル阪神で山崎六段と川﨑大地三段(指導棋士)の祝賀会。
山崎さんのNHK杯戦優勝・新人王戦優勝・六段昇段と、川﨑さんの三段昇段を祝う会で、約200人のファンが集った。パーティーを仕切ったのは師匠の森信雄六段。
棋士は20人くらい来ていて、最初にスピーチをしたのは谷川九段。
「山崎君がNHK杯戦で羽生さんに勝って優勝したのは大きい。価値のある勝利です。勢いに乗って朝日オープンでも挑戦しているわけですが、年度変わりというのは微妙な時期でありまして。私にも経験がありますが、それまで調子が悪かったのが良くなったり、また逆に良かったのが悪くなったりということがある。山崎君も4月からちょっと苦戦を強いられているようですが、棋士生活は長いので、いろんないいこと悪いことを貴重な経験にしてプラスにしてほしいと思います。もうすぐ朝日オープンの第3局がありますが、1局でも長く、極端に言えば1時間でも1分でも長く、羽生さんの前に座っていること。これが非常に大事です。頑張ってほしい」
山崎さんの謝辞がユーモラス。
「さきほど谷川先生から1分でも1秒でも盤の前に座っていることが大事だと言われましたが、勝てとは言われなかったので(場内爆笑)、ずいぶん気が楽になりました」
(以下略)
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朝日オープン将棋選手権は、当年優勝者が前年選手権者に挑戦して、優勝者を決める方式で、決勝は五番勝負だった。
山崎隆之六段(当時)は、NHK杯戦で羽生善治二冠(当時)に勝って優勝を決めたが、朝日オープン五番勝負では羽生選手権者に出だしから2連敗していた時。
そういう意味でも、谷川浩司九段のスピーチには非常に実感がこもっている。
山崎六段の少し自虐的な謝辞も絶妙だ。
対局中や感想戦でのボヤキも含めて、自虐的なところがあるのが山崎八段の数ある魅力の中の一つである。
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翌年の森一門祝賀会でも、谷川浩司九段がスピーチをしている。