将棋連盟道場への突然の五月みどりさん訪問

将棋世界1983年2月号、「メモ帖」より。

カラオケ天狗

 新宿カブキ町という日本一の繁華街に住む佐藤大五郎八段は最近カラオケに熱中。城ヶ崎ブルースという歌が得意だという。すぐ近所のカラオケ道場「102スタジオ」とかいう店に何十回かよって、12月上旬めでたく二段を許された。

 こうなると鼻息が荒くなる。

「歌は二上九段が巧いと評判だが、おれの判定では初段ぐらいだナ。剱持七段は”与作”を歌って自称四段だが、おれの行きつけの店に入ると周囲が上手すぎて歌えなくなる」

 当たるべからず勢いだ。いまやカラオケ時代、全国にこのような天狗さんが多勢いるんでしょうね。

美女の訪問

 女優五月みどりさんが12月15日、連盟道場を訪れ、花村九段から二枚落の手ほどきをうけた。

 突然のことだけに、道場では「予約すればお客さんがいっぱい来てくれたろうに」とうらめし顔。

 将棋連盟はこの日、五月さんに◯段の免状を進呈した。

(中略)

優勝できず

 森安秀光八段の歌う”おゆき”が全国ネットで流れた。これはNHKの正月の番組の有名人のど自慢番組。三ツ矢歌子、ヤクルトの酒井、中条静夫、映画解説水野晴郎、また江戸家猫八、鰐淵晴子たちにまじって歌ったのだが、日頃の調子はでず、優勝は俳優の伊吹吾郎。

 付き添って歌ってくれた内藤九段や応援団席の中瀬、兼田、神田の女流棋士、滝六段夫妻らに「面目ない。次の機会があったら上手に歌います」と言い訳を何遍も。

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薪割り大五郎と呼ばれた故・佐藤大五郎九段。

”当たるべからず勢い”とは、まさしくこのような時のためにあるような言葉なのだろう。

佐藤大五郎九段は、たしかに演歌のイメージだ。

二上達也九段とはカラオケをご一緒させていただいたことがあるが、二上九段は演歌ではなく歌謡曲系。高橋真梨子さんの曲もレパートリーに入っている。

剱持松二九段の『与作』もぜひ聴いてみたいところ。

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五月みどりさんが将棋を指すことを始めて知った。

1982年12月15日は対局が1局しかなく、花村元司九段はたまたま将棋会館に来ていたのだろう。

「下手殺し」の花村九段から二枚落ちの指導を受けることができたとは、すごい幸運なめぐり合わせだ。

ちなみに、五月みどりさんはこの頃2度目の結婚をしていたが、五月みどりさんの最初の夫は、新栄プロダクション会長の故・ 西川幸男さん。

当初は経営の苦しい浪曲の興行会社だった新栄プロダクションが、村田英雄さんの『王将』の大ヒットで、会社として大きく成長する。

2012年に西川幸男さんが亡くなった時、五月みどりさんが葬儀に参列している。

新栄プロ西川会長本葬に約1000人参列 前妻・五月みどり「恐かったけど、すばらしい人」(オリコン)

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NHKの正月の有名人のど自慢番組のキャスティングがユニークというかバラエティに富んでいてすごい。

伊吹吾郎さんが『水戸黄門』で格さん役をやり始めるのは、この年の10月から。

故・森安秀光九段の歌というと思い出すのは、内藤國雄九段による追悼文。

広い東京でただひとり、泣いているよな夜がくる