将棋会館なんでも鑑定団

近代将棋1988年12月号、武者野勝巳五段(当時)の「プロ棋界最前線」より。

 書いていて息が詰まってきたので、少し楽しい話をお届けしよう。

 東京の将棋会館、特別対局室にダルマの絵の掛け軸が飾られていたのをご存知だろうか。少し古い近将誌のグラビアをご覧になれば、上座対局者の後方に映っている絵を数枚は発見できるだろう。夏過ぎに掛け軸が変えられて、ああ将棋の対局室になじまなかったんだなあと納得していたら、さにあらず。あれは江戸時代の有名画家・谷文晁による”彩色孔明”の真品で時価千万円の大変な美術品であることが分かったので、倉に蔵まったのである。ダルマだと思っていたおじさんが、尊敬する中国の戦略家・諸葛孔明だと知って二度ビックリ。どうも旧会館落成(1959年)のお祝いに愛棋家から贈られたものらしいのだが、何と地下の倉庫には梅原龍三郎画伯の絵を含め同様の美術品が飾るに飾れず眠っているのだそうだ。あ~あ、こんなこと書くと邪心を招くと、また叱られてしまうのかなあ。

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谷文晁(たに ぶんちょう)は、テレビ東京系の「開運!なんでも鑑定団」ではお馴染みの名前。

贋作も多いが、本物であれば高い物は数千万円のものもあるという。

しかし、晩年に描かれた小さめの掛け軸は、本物であったが、なんでも鑑定団での評価額は35万円。

谷文晁は多くの作品を残しているので、描かれた時の年齢、作品の大きさで評価額は大きく変動するようだ。

特別対局室にあった作品の評価額が気になるところ。

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梅原龍三郎の作品もかなりの評価額になり、2009年に行われたオークションでは、3点の油絵がそれぞれ1,450万円、1,850万円、6,000万円で落札されたという記録がある。

加藤一二三九段が「開運!なんでも鑑定団」に出演した時の鑑定依頼品は梅原龍三郎のリトグラフ。リトグラフは原画を写真に撮り、形と色ごとに版を作る平版画で、鑑定額は30万円。(将棋界の名人と梅原龍三郎との関係をしのばせるということで、鑑定額が若干上乗せされている)

梅原龍三郎のリトグラフ(鑑定依頼人:加藤一二三さん)

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升田幸三実力制第四代名人も梅原龍三郎と親交が深かった。→大女優が見た升田幸三

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伝説の名著、加藤治郎名誉九段の「将棋は歩から」の装丁は梅原龍三郎が行っている。

将棋は歩から (上巻)