村山聖五段(当時)の振り飛車講座(3)

将棋マガジン1991年10月号、村山聖五段(当時)の連載講座「ダイナミック振り飛車戦法」より。

 最近、身も心もボロボロである。なにしろ勝てない、勝てない、頭痛がする位勝てない。

 しかも後手番だらけだ。

 9局やって8局後手、振り駒のたびに後手になる。

 ああ、僕に振らせてくれ、奨励会の時は振り駒の練習をして、好きな様に歩やと金を出せたのに。

 その内に先手番ラッシュがやって来るのだろうか。

 まあ負けた時の言い訳は置いといて。負けた時には少し落ち込みます。そんな時は音楽を聴いたり、旨い食事でもして気を紛らわせます。

 人生を楽しく生きるには、後悔をしない事、それが一番です。

(そう簡単に行きませんけれど)

 

 僕が振り飛車をやらなくなった理由は、実は急戦というやつの対策が解らないからです。

 しかし居飛車が優勢になっても玉の堅さが違うので、振り飛車は粘っている内に逆転する、というのは多々ある事です。その点は振り飛車党の方は良くご存知でしょう。

 一概に急戦といっても何通りもあり、その対策も入れるととても書ききれないので、2、3通りを紹介する位にしておきます。

初手からの指し手
▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲2五歩△3三角▲4八銀△3二銀▲5六歩△4二飛▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二玉▲9六歩△9四歩▲5八金右△8二玉▲6八銀△7二銀▲3六歩△5二金左▲5七銀左(基本図)

村山24

 手順中▲9六歩を手抜きしたり、△5二金左ではなく△4三銀~△3二金と指す順も考えられますが、一番多く見かけるのが基本図でしょう。

 先手が▲5七銀左で▲5七銀右と指すのは将来、4筋が少し薄そうです。

 さて基本図で色々な手があります。

基本図以下の指し手①
△6四歩▲3五歩△同歩▲4六銀△3六歩▲3五銀△4五歩▲3三角成△同銀▲8八角(1図)

村山25

 まず△6四歩と突く手が一番自然だと思います。

 これに対して先手は▲3五歩から▲4六銀と弱い角頭を狙って攻めて行きます。ここで△3六歩と突くのが手筋です。この手の感覚を覚えておいて下さい。

 ▲3五銀に△4五歩と角を捌きつつ飛車先を伸ばします。

 先手は▲8八角で▲2四歩△同歩▲同銀と行きたいのですが、以下△同銀▲同飛△3三角と打たれて思わしくありません。

 ▲8八角と打たれた局面で△5四角あるいは他の手ですが、余り自信がありません。勝負がつくのはまだまだ先ですが、この局面は少し振り飛車が悪そうです。

基本図以下の指し手②
△4三銀▲4六歩△5四歩▲4五歩△6四歩▲3七桂(2図)

基本図以下の指し手②

△4三銀▲4六歩△5四歩▲4五歩△6四歩▲3七桂(2図)

村山26

 振り飛車が△4三銀と角頭を守るのも普通の手です。

 これに対して先手が▲4六銀から▲3五歩と攻める手もあると思うのですが、▲4六歩と突かれる方が僕は嫌です。

 恐らく2図の様になり互角とは思いますが、振り飛車としては少々不満な陣形です。いつでも先手に仕掛ける権利があるからです。

基本図以下の指し手③
△5四歩▲9七角△4一飛▲8六角(3図)

村山27

 △5四歩と突いた時に▲9七角と出るのが山田定跡の一手です。

 △4一飛と引いた時に▲7九角と引く手もあるみたいですが、僕は▲8六角と指される方が嫌です。

 3図で後手は△1四歩位だと思いますが、▲1六歩と受けられ少々指し手に窮します。

 ▲6六銀から▲6八角の筋がいつでも気になるからです。

基本図以下の指し手④
△1二香▲6八金直△5四歩▲3八飛△4三銀▲3五歩(4図)

村山28

 基本図で△1二香と上がる手がありあす。

 これは△6四角の筋を残して急戦に備えようという意味です。

 先手は▲6八金直と自重しました。

 後手は△5四歩と突きます。今度は▲9七角と出られても▲4一飛と引いて引き角の筋になりません。

 先手は▲3八飛と回ってきました。この手に△4五歩と突くのは▲3三角成△同銀▲3一角が嫌です。

 △4三銀に先手は当然▲3五歩と突いてきます。

4図以下の指し手
△3五同歩▲4六銀△4五歩▲3三角成△同桂▲3五銀△2五桂(5図)

 △3五同歩に▲同飛なら△3二飛と回って振り飛車充分です。

 先手が▲4六銀と数を足した時に軽く△4五歩と突くのが良い手です。

 ▲3三角成△同桂▲3五銀と攻めた時に△2五桂と目標物をドンドン捌いて行きます。

村山29

5図以下の指し手
▲3四歩△3二飛▲2八飛△2四歩▲3三角(6図)

 先手は▲3四歩と押さえ込みに来ました。

 これに対して怖がらず△3二飛と回り3筋の逆襲を狙います。

 先手は△2七角と打たれる手があるのでそれを消しつつ桂取りに▲2八飛と回ります。

 ここでも軽く△2四歩と突くのが味わい深い好手です。

 先手は次に△3四銀と大事な歩を取られてはいけないので▲3三角と打ちました。

村山30

6図以下の指し手
△4二角▲1一角成△3四銀▲同銀△同飛▲1二馬△3五飛(7図)

 6図で、放っておいて▲2四角成と成られてはいけません。

 △4二角と打つのが良い手です。もし先手が▲2四銀と出ても△3四銀と歩を取れば充分です。

 先手が▲1一角成とした時に△6四角と飛車取りに出て、それを受けた時に△4二金と寄っても振り飛車が指せそうです。

 △3四銀と出た時に▲2一馬と寄ってきても、△2三銀と引いて▲4四銀に△6四角(変化A図)と出れば優勢です。

村山32

  本譜、▲1二馬と香を取られても△3五飛と浮いた局面は後手の方が良さそうです。

 次に△6四角や△3九銀があり、振り飛車の方がすべての駒が働いているからです。

村山31

 

 今度は先手が▲2六銀と棒銀に出て来る変化を解説します。

村山24

基本図からの指し手⑤
△1二香▲6八金直△5四歩▲3七銀△4三銀▲2六銀△3二飛▲4六歩△6四歩(8図)

 棒銀の狙いは△4五歩と突かれた時の当たりを避けながら角頭を苛めようというものです。

 それに対して角頭を受けるために△4三銀から△3二飛と飛車の位置を変えます。そして▲4六歩に△6四歩と手待ちをします。

村山33

8図以下の指し手
▲3八飛△5一角▲3五歩△6二角▲3四歩△同銀▲4五歩(9図)

 ▲3八飛ですぐ▲3五歩と突いてきても△5一角と引けば同じだと思います。

 ▲3八飛に△7四歩と突き▲3五歩に△4五歩と突く変化もあると思います。以下▲3三角成△同飛▲4五歩△3五歩▲4八飛(変化B図)と進行します。

村山35

 プロの実戦例も何局かあると思いますが、この局面の形勢判断は難しいです。変化B図以下は△3四飛あるいは△3四銀位です。

 △5一角と引き▲3五歩に△6二銀が棒銀に一番多い対策です。

村山34

 先手は▲3四歩から▲4五歩と攻めてきます。

 9図で▲4五歩を△同歩は▲3三歩と打たれて後手不利です。

 △5五歩と突いて▲同角に△5三金か、それとも単に△4三金と上がるかまだまだこれからです。

 今回の講座はこれで終わりです。振り飛車に急戦をする人はプロでは余りいませんが、それでも何十年も研究され、実戦でも何局も見ます。

 でも勝ったり負けたりだから恐らく優劣不明なのでしょう。

 振り飛車がうまくなるには、やはり番数です。形や感覚を覚えていくのが上達の早道です。

 それではまた来月会いましょう。

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居飛車対振り飛車の対抗形での居飛車側からの急戦。

非常に奥の深い世界であり、いまだに結論が出ていない戦型も多い。

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四間飛車に対する居飛車急戦だけでも、山田流、鷺ノ宮流、斜め棒銀、棒銀、▲4五歩早仕掛け、▲4五桂富沢キック、右四間飛車など。

私は振り飛車党だけれども、これらの定跡や変化は少ししか覚えていない。

一時期、真面目に勉強してみようと思ったこともあったが、振り飛車側の△6四歩が突いてあるかないか、△1二香と上がっているかどうかで状況が変わったり、高美濃か普通の美濃囲いかで世界が変わったり、居飛車側が6九金のままか6八金と上がっているかで振り飛車側が同じような反撃をしたとしても有利になったり不利になったり、微妙な違いなど覚えることが多すぎて挫折したのだった。

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しかし、一度に網羅的に覚えようとするのではなく、この講座のように範囲を限定して理解する方式が良いのかもしれない。

京都のお寺を1日に20箇所回ると、どのお寺がどのお寺だったか微妙な違いが分からなくなり混乱してしまうが、1日に3箇所位であれば全てのお寺のことが頭に入る。このことと同じと言えるだろう。

 

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