将棋世界1984年4月号、「林葉直子さん女流名人位を防衛 ―なんでもかんでもインタビュー―」より。
名人、王将の二冠をガッチリと手にし、今や実力、人気ともに女流プロNO.1の座をかためつつある林葉直子さん。
今期の女流名人位戦では挑戦者の関根紀代子三段を3-0のストレートで降し、見事に名人位初防衛を果たした。
―おめでとうございます。ストレートの防衛とはすごいですね。
林葉 ありがとうございます。幸運でした。
―早速ですが、今期は全局振り飛車で戦いましたね。それも四間飛車の3連投。前期の蛸島名人に挑戦したときは蛸島さんの振り飛車に林葉さんの居飛車という展開でしたが林葉さんはどちらが得意なんですか。
林葉 本当は振り飛車をやっつける(笑)のが好きなんです。でも、相居飛車や相振り飛車はあまり得意じゃないから……、相手が居飛車だと飛車を振っちゃうんです。
(中略)
―対局の前に研究などは?
林葉 あまりしません。
―普段の勉強方法は?
林葉 棋譜を並べるとか詰将棋を解くくらいです。でも、初めの形が入玉形とかになるといやになっちゃう(笑)んです。
―奨励会では研究会をやっている人が多いけれど?
林葉 今は入っていません。
―仲良しの……
林葉 広恵ちゃん(中井二段)と久美ちゃん(山田二段)
―……たちと将棋を指すことは?
林葉 全然ダメ。3人一緒にいるとおしゃべりばかりになっちゃうんです(笑)
―遊びに出かけちゃうんだ。
林葉 買い物くらいね。たまに原宿とか…エヘヘ。(そういえば直子ちゃんも、もう高校生なのだ)
(中略)
―さて、名人位を防衛したあとはこんどは女流王将戦が待っていますね。
林葉 久美ちゃんは?
―えーと、今のところ2連敗ですね。
林葉 そうですか、ちょっと調子が悪いみたい。(と心配そう)
―誰が指しにくい相手ですか。
林葉 そうですね。やっぱり広恵ちゃんかな仲がいいから。
―防衛の自信は?
林葉 わかりません。
―ところで仲がいいというと、歌手の松田聖子さんとは同郷で何回もお話もしているということですが。
林葉 ええ、大ファンです。すっごくカワイイんですよ。
―田原俊彦さんのファンでもあるんですね。どこがいいんですか。
林葉 トシちゃんはやさしいし、仕事を一生懸命やるんです。
―そうですか。なんかパッ◯ラパ◯に見えるんですけど。
林葉 そんなことありません!(怒る)
―わ、わかりましたョ。ところで今日はバレンタインデーですけど、誰かにチョコレートをあげましたか。例えば彼とか。
林葉 そんな人いません! でも米長先生と先崎君(奨励会2級)とお父さんと弟にはあげたことはあります。みんな身内(笑)
―ボーイフレンドはいないということですが、谷川名人のようなタイプは?
林葉 やさしそうですね。でも谷川先生は明菜ちゃんが好きなんでしょ。聖子ちゃんとはライバルだから……。アッ、でもお兄さんがトシちゃん(俊昭氏)だ。
(ガクッ)
―今は一人で生活しているんですね。
林葉 はい。お母さんのお友達の妹さんのお友達のアパート(笑)に住んでいます。
―おこずかいは?
林葉 食費なんかも全部入れて1ヵ月8万円くらいかな。
―たいへんですね。
林葉 でも自由だから。
―起床は?
林葉 7時くらい。(ちょっとあやしそう)
―食事は自分で?
林葉 米長先生の家に内弟子していたころ先生の奥さんにおそわりました。でも、外食が多いですね。
―好きな食べ物は?
林葉 ラーメンと焼き肉です。しいたけは大嫌い!
―それでは健康に気をつけて二冠王を守りつづけてください。
林葉 はい。頑張ります。
―今日はどうもありがとうございました。あっ、ところで林葉さんは歌手の人達とはずいぶん会っているんでしょう。
林葉 ええ?薬師丸ひろ子ちゃんとか、堀ちえみちゃんとか、河合奈保子ちゃんとか、石川秀美ちゃんたちね。
―こんど紹介してください。
林葉 ダメです!
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このインタビューが行われたのが1984年2月14日。
山崎隆之八段が3歳の誕生日、深浦康市九段が12歳の誕生日の日だ。
羽生善治名人が七冠王となったのが、この日から12年後の1996年2月14日。
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2010年2月14日、将棋ペンクラブ会報の特別企画で林葉直子さん-木村晋介会長戦(飛車落ち)が行われた。
このインタビューから26年後のこと。私は観戦記担当だった。
あの日から6年も経ったのかと、何か感慨深い。
→林葉直子さん-木村晋介弁護士戦(観戦記)
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2010年2月14日、その日のブログの記事が何だったか調べてみると、
ブログを初めて以来、特に変えてはいないつもりなのだが、今のブログ記事の雰囲気とはずいぶん違う。
こういうのが6年の歳月というものか。
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林葉直子さんは病気療養中だが、月に一度位のペースでブログで日常の様子を伝えてくれている。