2001年の新春特別ドラマ『聖の青春』

将棋世界2001年2月号、『聖の青春』が正月ドラマで登場!!「あの感動をもう一度……。」より。

大反響を呼んだ『聖の青春』が新春特別ドラマとしてTVに登場します。

 難病と闘いながら名人を目指し、29歳で夭折した、故・村山聖九段の生涯を通して、師弟愛、親子愛、友情を描いた物語。主人公・聖役の藤原竜也、師匠森役の小林稔侍、本誌編集長の大崎役の寺島進ほか、多彩な出演陣で、観る者を再び感動の渦に巻き込みます。(平成13年1月6日午後2時よりTBS系にて放送)


インタビュー「激しさとデリケートさ」
演出の今野勉氏に聞く

―「聖の青春」をドラマ化するにあたって、ストーリーのどんなところに惹かれたのですか。

今野 ぼくは将棋が好きで、村山さんがTVに出てる映像はよく見ていたんですが、わりと礼儀正しくておとなしい、繊細な感じがしていたんです。でも、原作を読んでビックリしたのは、実際はすっごく激しい面を持っているんですよね。物凄い喧嘩をしたり、激しい言葉を投げつけたりとかね。そこが非常に驚きました。みんなが知ってる村山さんのイメージとはまた別の面をこの人は持っているなあと。多面性というものをね。想像以上に小さい頃から死の影を背負っていて、激しさの裏にはそういう苛立ちみたいなものがあったんじゃないかと。それで友達とか両親に激しくあたっていたという。もちろん、病気と闘っているというのは大筋でありますが、そういう激しさとデリケートな部分を出したいなあと思っています。

―主人公の村山聖役に藤原竜也さんを選んだ理由は?

今野 いま言った激しさとデリケートな感じが一緒に出せる、そういうキャラクターであるという点がひとつ。そして13歳ぐらいから亡くなる29歳までを一人の俳優でやりたい。すると、(役者には)少年の顔を持ちながら青年の顔も持っていることが必要で、それを最優先しました。実際の村山さんの顔に似ているか似ていないかというのは、見る人にとってはどうでもいいことです。むしろ、どういう人間だったかが大事なわけだから。あと、村山さんのお父さんが、もしドラマで聖の役を誰か俳優が演じるとしたら、藤原竜也がいいなあと実は思っていたそうなんですよ。聖が病気しないであのまま大きくなったら、竜也君のような青年になったんじゃないかと思っていたらしいです。そういう意味でも、選択は間違いなかったと思っています。

―村山さんの人生もそうですが、森さんとの師弟関係が、なぜこれほど世間の共感を呼んだのでしょう。

今野 森さんの生活もそうだし、村山さんの大阪での生活もそうなんですが、現代のような物が溢れてリッチな時代に、ああいう素朴な生活というか、いわば”貧乏暮らし”ですよね。そういう生活をあえて選んで生きている青年がいるっていうのが、ぼくなんかにとっては驚きなんです。これはきっと世間の人にとっても驚きなんじゃないかなあ。強い棋士というとね、最近は割と結構ブランド物を着て派手っていうイメージがあるんです。でも村山さんは、森先生を真似したのかもしれないけれどもそういう都会的な生活にこだわらないですよね。お金のことはどうでもいいみたいなところがあるし、汚い部屋をずっと手放さなかったりしてね。ぼくはそういう若者たちが今でもいるとは思ってなかったんです。

―このドラマを通して視聴者の皆さんにどんなことを訴えたいですか。

今野 人生何がやりたいか。その目的がはっきりしていれば、お金とか豊かさに関係なく、人間は幸せになれるっていうことです。彼は病気だったけど、ある面で目標を見つけたんでね。まっしぐらに行ったし。森先生っていう人は、自分は将棋はそんなに強くないかもしれないけれども、村山さんにただ将棋を教えたんじゃなくて生き方を教えたんだと思うんですよね。単に一生懸命になるんじゃなくて、世の中にはいろんな生き方があるんだよと。そういうことを村山さんは教えられて、生きる目標を定められたんだと思います。


今野勉 演出家

昭和11年4月2日秋田県出身。34年東北大学文学部卒。同年ラジオ東京(現TBS)入社。テレビ演出部に所属。ドラマ「土曜と月曜の間」で日本初のイタリア賞グランプリ受賞。「七人の刑事」を約50本演出。放送作家協会演出家賞受賞。45年テレビマンユニオン創立に参加。以降、ドラマ・舞台の演出のほかドキュメンタリー番組など数多く手がけ、数々の賞を獲得。著書も多数。平成12年よりテレビマンユニオン取締役相談役、武蔵野美術大学映像学科主任教授。

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将棋世界2001年3月号、森信雄六段(当時)の「風景110 中山寺に初詣に行く」より。

 1月6日にテレビドラマ「聖の青春」が放映された。切なさがしみてくる。広島の橋での「死を認めたくない」と言うセリフのシーンが私には印象的だった。

 大阪のロケで2日間立ち会わせてもらったが、寒さで凍えながらも、主演の藤原竜也さん、小林稔侍さん、制作スタッフの皆さんの真剣さと暖かさに溶け込ませてもらえて、うれしかった。

 ありがとうございました。

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新春特別ドラマ『聖の青春』、私はリアルタイムでは見逃してしまっているが、Youtubeに10分ほどの映像がアップされていた時期があり、それを見たことがある。

ちょうど、関西将棋会館で森信雄四段(小林稔侍さん)が母に連れられた村山聖少年(藤原竜也さん)と初めて会う前後のシーン。

病気のことを話し、弟子入りできるかどうか不安そうな母と村山少年

森四段「ええよ」

ほっとしながら喜ぶ母と村山少年

森四段「顔を見ればわかるんや」

この、「ええよ」と「顔を見ればわかるんや」と言う時の小林稔侍さんがたまらなく優しくて、見ていて涙が出そうになる。

森信雄七段と小林稔侍さんではイメージが随分違うよなあ、と見る前は思っていたのだが、このシーンを見ただけでも小林稔侍さんが絶妙のキャスティングであることを理解できた。

その前の、森四段が初めて登場するシーンは雀荘で麻雀を打っている場面。カップ焼きそばを食べながら打っているのだが、ソースをそばにからませようとしているのか、ひとくち食べるまでに何度も箸で焼きそばを掴み直すのが印象的だった。

このドラマが、映画『聖の青春』の封切り日と同じ11月19日(土)と11月25日(金)にTBSチャンネル(CS放送)で放映される。

11/19(土)午前7:00~午前8:40
11/25(金)午後5:50~午後7:30

聖の青春(TBSチャンネル)

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11月2日に行われた東京・神楽坂で行われた、森信雄七段と大崎善生さんのトークショー「村山聖という天才がいた」。

森信雄七段と大崎善生さんが登場した後、冒頭に映画『聖の青春』の予告編が流された。

森七段は、顔だけ後ろ向きになり、その映像をずっと見ていた。森七段にとっては、もう何十回、あるいは100回以上も見ているであろう映像を。

村山九段に対する森七段の思いがそのまま現れているようで、私は胸が熱くなった。

 

 

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