将棋世界2005年12月号、「第64期順位戦」より。
本命羽生の4回戦は同じく2勝1敗の鈴木(大)。1図は鈴木が四間飛車から石田流に組み替えた局面。▲6六銀を早めに上がり居飛車穴熊の仕掛けを封じたはずであったが……。
1図から△9五歩▲同歩△同香▲9六歩△同香▲同飛△8六歩▲同角△9五歩▲同飛△6六角で羽生がペースを握った。9筋で香を捨てて△8六歩がうまい仕掛け。この筋はちょっと見たことがない。以下も難しい戦いなのだが、仕掛けを許した鈴木が局面を悲観し、68手の短手数で羽生の勝ち。
著書「決断力」がベストセラーとなっている羽生だが、構想力も桁違いだ。
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▲6六銀型の石田流は、破壊力が抜群の戦型。
1図が先手番だとしたら、▲7四歩△同歩(△同飛は▲7五銀で飛車が死ぬ)▲7五歩のような攻めで7筋を突破することができる。
また、▲6六銀型の石田流は、守備力も強い。
しかし、羽生善治四冠(当時)は、全く新しい構想で、その死角をついて崩壊へと至らせる。
1図からの手順を追ってみたい。
1図は、後手から△4五歩と角道を開け、先手が▲4五同歩と応じた局面。
ここから、△9五歩▲同歩△同香▲9六歩(2図)。
普通はこれで守り切ることができるのだが、△同香▲同飛△8六歩(3図)。
△8六歩で6六の銀が孤立してしまった。
△8六歩に▲同歩として△6六角には▲8五歩という切り返しも見えるが、△8六歩▲同歩の時に△9五歩とされて、ダメそう。
そういうわけで△8六歩には▲同角(4図)。
ここで△6六角と銀を取ると、▲9五角で飛車角両取りとなって、後手が逆にハメられた形になってしまう。
この▲9五角の狙いを封じ込むのが、△9五歩(5図)の焦点の歩。
▲同角ならば△8七飛成で、6六の銀を守る
- ▲6七金は、△9四歩▲8六角△6六角▲同金△9五銀
- ▲4四香は、△同銀▲同歩△9四香の田楽刺し
で、どちらも先手がつまらない。
先手は▲9五同飛と取って後手は△6六角(6図)と銀を取ることができた。
先手の石田流は崩れてしまった…
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しかし、6図から▲8五香とするとどうなるのだろう。
「以下も難しい戦いなのだが」と書かれているように、本当に難しそうだ。