将棋世界1980年12月号、「新鋭棋士 私のPR」より、森信雄四段(当時)。
動物園で
10月のある日、秋晴れの好い天気だったのでふらっと天王寺動物園に行った。人間同士の付き合いだと、たまに面倒くさいこともあるから、こういう所に来ると妙に親近感がある。
野生から檻の生活で、気の毒だが、案外、無邪気でいるふうにも見える。神経質にイラ立っているものから、いつも眠そうにボケーッとしているものやら、面白いものだ。
僕はライオンとラクダとペンギンのファンで、中でもラクダのあのボケた様な眼が好きだ。
その日、遠足やら写生に来ている子供で一杯だったが、描いている絵が又良かった。単純明快そのもので、変に器用さがないのがいい。
ベンチに寝転び、少し都会の汚れはあるがそれでも抜ける様な青空に吸い込まれる気持ちになる。ちょうど10年前にも、よく、山の上にある公園で寝転び、山や空や海をあきもせず眺めていたものだ。
考えて見ると、当たり前だが、この10年で随分いろんな事があった。そして、あまりの目まぐるしさに、何かに振り回されながら生きてきた気もする。もうどんな事があっても、戻る事の出来ない所に足を踏み込んでいる。
傷ついても後悔しても、もう後がない!
(四段 森信雄)
自戒譜
昭和55年7月23日 昇降級リーグ戦
▲九段 坂口允彦
△四段 森信雄▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金
▲2四歩△同 歩▲同 飛△2三歩▲2六飛△1四歩
▲3八銀△6二銀▲9六歩△6四歩▲7六歩△8六歩
▲同 歩△同 飛▲6六飛△6三銀▲7五歩△8二飛
▲7七桂△3四歩▲3六飛△3三金▲8五歩△4二玉
▲6八銀△4四歩▲8六飛△7二金▲9七角△4五歩
▲8七金△4三金▲7六金△8三金▲4八玉△3二玉
▲6六歩△4二銀▲6七銀△9四歩▲5六銀△9五歩
▲同 歩△8四歩▲8八角△8五歩▲同 金△8四歩
▲9四金△同 香▲同 歩△8五歩▲同 飛△8四金
▲8六飛△7六金▲同 飛△7五金▲8三歩△同 飛
▲8四歩△同 飛▲8五歩△7四飛▲9六飛△8五金
▲同桂△7八飛成▲5八香△8八竜▲9三歩成△8五竜
▲8三と△同竜▲9二飛成△8九竜▲6二金△2六桂
▲6三金△3八桂成▲同 玉△2七角▲同 玉△4九竜
▲4一銀△同 玉▲5二金打
まで、93手で坂口九段の勝ち(消費時間 ▲1時間47分 △3時間25分)
92手目の△4一同玉が敗着。次の▲5二金打をノータイムでピシッと指されて、アッ! トン死ですが、このずっと前から勘違いしていたのだから、もう言う言葉なし。18分呆然として投了しました。
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先週の森信雄七段のブログ「森信雄の日々あれこれ日記」に書かれていた文章だよ、と言われたら信じてしまいそうになるほど、森信雄七段らしい森信雄四段(当時)。
このような、今も昔も変わらない雰囲気が、森信雄七段らしくていいなあと思う。
それにしても、当時の何人もの若手棋士が書いた「新鋭棋士 私のPR」、他の棋士はもっとギラギラと輝く思いを述べている中、森信雄四段の文章は異色だったのではないだろうか。
将棋の神様が、「広島の村山聖少年の師匠には誰がいいだろう」と将棋世界を読みながら考えている最中に、この森信雄四段の文章を読んで、「よし、この変わった男に師匠をやってもらおう」と決めた、そのような光景が私の頭の中に浮かんできた。
この直後、森信雄四段は新人王戦で優勝する。
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11月19日公開予定の映画「聖の青春」の特報映像が角川映画からYoutubeにアップされた。
早く観たい。