将棋世界1999年12月号、高橋道雄九段の「タカミチの実戦コーナー」より。この月のテーマは短手数将棋。
第58期B級2組順位戦
平成11年9月10日 於・関西将棋会館
▲八段 田中魁秀
△竜王 藤井猛▲7六歩△3四歩▲4八銀△4四歩▲6八玉△4二銀▲7八玉△4三銀▲2六歩△9四歩▲5八金右△4二飛▲2五歩△3三角▲7七角△7四歩(途中図)
途中図以下の指し手
▲8八玉△7三桂▲9八香(1図)▲9八香=藤井システム出現後は、こうしてどんどん穴熊に囲おうとするのは、逆に目標になってしまい、やや危険と思う。
1図以下の指し手
△9五歩▲9九玉△8五桂(2図)△8五桂=とは言ってもこんな強襲見た事ない。
藤井竜王の将棋は、序盤からすぐにでも噛み付きたがるので、居飛車党はとても困る。
2図以下の指し手
▲6六角(3図)▲6六角=8六へ出るか、8八へ引きたい。▲5五角は△8二銀▲8八銀△5四銀で、角の進退に窮する。
3図以下の指し手
△9七桂成▲同香△9六歩▲同香△同香▲8八玉△9二飛(4図)△9二飛=サーッと飛車を転回出来てしまうのが、△7二銀などと上がっていない効果。▲9三歩と打たせれば、先手の角成りが消せる上に、9六の香が楽な姿となる。
4図以下の指し手
▲9三歩△7二飛▲9五桂△8一香▲5五角△7五歩▲9一角成△4五歩(途中図)途中図以下の指し手
▲7八玉△7六歩▲6八玉△9八香成▲5九玉(5図)▲5九玉=先手は手数を費やし、せっかく9九まで行った玉を、また引き戻らざるを得なくなってしまった。
5図以下の指し手
△8九成香▲9二歩成△7五飛(6図)△7五飛=好手。軽快な感のある飛車浮き。
6図以下の指し手
▲8一と△6二銀▲7一と△同金▲8三桂不成△6一金▲7八歩△7九成香▲同金△9五飛(投了図)まで、56手で藤井竜王の勝ち△9五飛=次の飛車成が受からず、先手降参。
それにしても、げに恐ろしきは藤井システムの破壊力よ。
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3図の▲6六角で、▲8六角または▲8八角とすればまた違った将棋になっていたとは言え、藤井システムの破壊力が凄い。
高橋道雄九段の「藤井竜王の将棋は、序盤からすぐにでも噛み付きたがるので、居飛車党はとても困る」は、非常に実感のこもった名言だと思う。