奨励会入会試験問題(1979年版)

将棋世界1979年12月号、「公開!奨励会試験問題」より。

今年の関東奨励会入会試験は10月17、18日、将棋会館で行われましたが、この問題はその一次試験ともいうべき筆記試験です。第一問の知識問題は常識のテストで比較的易しいのですが、第二問の詰将棋や第三問の次の一手などは、かなり高度な能力が要求されます。制限時間は1時間。さあ、あなたもチャレンジしてください。

第一問 知識問題

1.現在のタイトル保持者名を書きなさい。(10点)
名人(      ) 十段(      ) 王将(      )
王位(      ) 棋聖(      ) 棋王(      )

2.将棋盤、駒、駒台の材質で最良のものを下の中から選びなさい。(10点)
盤(   ) 駒(   ) 駒台(   )
<サクラ、クワ、スギ、イチョウ、ヒノキ、カヤ、ツゲ、ブナ、ケヤキ>

3.代表的な囲いの名前を五つ書きなさい。(10点)
(      )(      )(     )(      )(      )

第二問 詰将棋 (その1…10点  その2…15点)

次の詰将棋を解きなさい。

1979詰将棋1

1979詰将棋2

第三問 次の一手(共に先手の手番 その1…10点  その2…15点)

1979次の一手1

1979次の一手2

第四問 読みの問題

2図を盤面に書きなさい。

1979図面

1図よりの手順
△3八角▲5九飛△2七角成▲5四銀△5八歩▲同飛△3六馬▲4三銀成△5八馬▲3二銀成△同玉▲5三金△4九飛▲5九歩△6九銀▲8八玉△6七馬▲3三歩△同桂▲5七銀(2図)

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この年の奨励会試験は、関東が47名が受験し14名が合格、関西は22名受験で10名の合格。

関東では林葉直子さん(11歳)、関西では井上慶太少年(15歳)、藤原直哉少年(14歳)、長沼洋少年(14歳)が入会している。

先崎学少年(9歳)は残念ながら落ちている。

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第一問の1。

リアルタイムなら簡単な問題だが、37年後の今だとカルトな超難問と化す。

正解は、

名人…中原誠
十段…中原誠
王将…加藤一二三
王位…米長邦雄
棋聖…中原誠
棋王…米長邦雄

王座戦はまだタイトル戦という位置付けではなかった。(1983年からタイトル戦になる)

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第一問の2。

これは、盤…カヤ、駒…ツゲ、駒台…クワ

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第一問の3。

今日の私なら、美濃囲い、矢倉囲い、中住まい、舟囲い、銀冠と書くだろう。

正解例としては、矢倉囲い、美濃囲い、穴熊、舟囲い、カニ囲い、金無双、その他種々、と載っている。

美濃囲い、高美濃囲い、ダイヤモンド美濃、ちょんまげ美濃、木村美濃、と書くような豪の者がいたかどうか。

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第二問その1。

▲3三銀△3五玉▲4四銀不成△同玉▲5四金まで5手詰。

第二問その2

▲3一銀△2三玉▲3三金△1三玉▲2二銀△1二玉▲1一銀成△同玉▲1二香△同玉▲3二飛△1三玉▲2二飛成まで13手詰

その1は5手詰にもかかわらず、初手、3手目は思い付かないような手。3五に玉を逃がしてはいけないという先入観を持ってダメなようだ。

解答欄には次のように書かれている。

この詰将棋は傑作なので、作者は誰かと調べたら奨励会幹事の佐藤義則六段でした。

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第三問その1。

▲3四銀で必至。

第三問その2。

▲8八角で先手勝ち。

その1もその2も味わい深い問題。勉強になる。

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第四問の答えは、

1979図面2

有名な中原名人の▲5七銀が出るまでの棋譜。こうやって辿ると、あらためて凄いと感じる。

リアルタイムで見ていた人達は鳥肌が立ったことだろう。

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それにしても第二問以降は当然といえば当然だが、難しい問題ばかり。

奨励会に入ってからも厳しいが、入るのも厳しい。