画期的だった奨励会特別選抜戦

将棋マガジン1985年10月号、「奨励会特別選抜戦開催のお知らせ」より。

 米長企画と本誌の共催で、次号から「奨励会特別選抜戦」が始まります。これは、次代の棋界を担う奨励会員の励みになるように、という意図で企画されたもの。これまでにないシステムを採用し、また賞金も奨励会員が参加する棋戦ではかつてない破格な額となっています。

エントリー制

 参加する、しないは本人の自由。参加希望者はエントリー料(千円)を支払うシステムです。

 すでに7月末日に申し込みは締め切られ、関東奨励会から66名、関西奨励会から25名の、計91名がエントリーいたしました。

 ちなみに関東、関西とも有段者は全員参加(計46名)。総平手戦にもかかわらず、級位者もほとんどが参加します。

予選は対局料なし

 前述のように、予選から本戦トーナメントの決勝まですべて平手戦。予選の組み合わせ抽選はすでに終わり、本戦への進出者も8月下旬には決定する予定です。

 予選の対局料はなし。これも棋界では画期的なシステムです。厳しいようですが、これによって参加者は一層の頑張りを見せてくれることでしょう。

 本戦入りは関東11名、関西5名の計16名。これは参加者人数の東西比で決められました。

破格の賞金

 予選を通過した16名に初めて対局料が出ます。と、ここまで書けばもうおわかりでしょう。つまりプロゴルフの競技システムと同じなのです。ただし、対局料が出る、といっても勝者と敗者が同額ではありません。ものすごーい差があるのです。

 まず1回戦の勝者の対局料は5万円なのに敗者はわずか1万円。2回戦以降はさらに差がついて勝者10万円、敗者1万円。準決勝は勝者20万円、敗者1万円。そして決勝は勝者50万円、敗者はやはり1万円という具合。つまり優勝すれば計85万円が手に入るわけです。これは奨励会員にとって大きな魅力。ある若手四段が「オレも参加したいよ」と語ったほどです。

(以下略)

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決勝戦が51万円、準決勝が42万円、2回戦が44万円、1回戦が48万円で対局料総額は185万円。

これに記録係の人件費、関西から来る奨励会員の交通費、宿泊費などを考えると、総額250万円から300万円、余裕を持っても400万円ほどでこのような棋戦を行うことができる。

米長邦雄十段(当時)の素晴らしい決断だ。

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この棋戦で優勝したのは”ベルサイユ高田”と呼ばれていた高田尚平三段(当時)。

羽生世代奨励会員は予選の段階で皆敗れている。

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現在も、現在だからこそ、このような棋戦があっても面白いと思う。