杉本昌隆三段(当時)「一刻も早く四段にならねば……」

将棋世界1990年9月号、「奨励会人物紹介 杉本昌隆三段」より。

将棋世界同じ号より。

 三段リーグもいよいよ終盤戦、関西の期待は杉本三段である。現在8勝4敗と三番手ながら、残り全勝ならば、直接対決もあるので逆転出来るかもしれない。

 彼は今21歳であるが、11歳小学生の時に入会しているから、もう10年目である。もっとも、入会が早かった為に6級から5級昇級に3年弱費やしているからで、途中はむしろ順調だった。三段になり、新人王戦でも活躍したから、三段リーグが始まった時も常に本命視されていたのに、それからもう3年、彼は期待を裏切っている。森安九段を信奉する、その振り飛車は研究が行き届いており(ある戦型などは詰みまで研究しているという噂だ)、それでもなお、序盤から時間を使ってしまうため、いつも秒読みになるが、その指し手は正確だ。そんな彼がまだ四段になれないのが不思議なのだが、その強烈な自負心をとっても、彼は立派に棋士の器である。

 ただ少し考え込むタイプのようなので、好きなクラシック音楽でも、「悲愴」など聴かずに、「運命」のフィナーレ「光の爆発」でも聴いて勢いをつけてきてほしいのである……。「社会的に見ても奨励会員の存在価値など無に等しい……。一刻も早く四段にならねば……」―彼の自戦記の一節である。

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この期の三段リーグは、佐藤秀司三段(4位)がラス前の第1戦、13勝2敗を決めた時点で昇段が確定。

この時、杉本昌隆三段(14位)は10勝5敗、近藤正和三段(24位)が12勝3敗で、残る一つの昇段枠は、この二人に絞られていた。

ラス前の第2戦は杉本三段勝ち、近藤三段負けで、杉本三段11勝5敗、近藤三段12勝4敗。

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最終日は第1局目が杉本-近藤戦の直接対決。

杉本三段が勝負手を放って勝ち、これで杉本三段、近藤三段とも12勝5敗。杉本三段は自力、近藤三段は他力となる。

最終局である第2局は、杉本三段、近藤三段とも勝ち、杉本三段の昇段が決まった。

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「その振り飛車は研究が行き届いており(ある戦型などは詰みまで研究しているという噂だ)」

杉本三段は、村山聖四段(当時)から非常に高く評価されていた。

村山聖四段(当時)「杉本三段は全振り飛車党の中で唯一の本格正統派です。メチャクチャ格調が高いんですよ」

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