「他の棋士には圧倒的な差をつけて防衛している羽生が、こと藤井相手にだけは、苦戦している」

将棋世界2001年2月号、青野照市九段の第13期竜王戦七番勝負〔藤井猛竜王-羽生善治三冠〕第6局観戦記「今日は運が悪かった」より。

 今期の竜王戦も、直前に同じカードで行われた王座戦同様、藤井が白星を先行させている。他の棋士には、圧倒的な差をつけて防衛している羽生が、こと藤井相手にだけは、苦戦している。そして指す戦法に苦慮している感じがするのは確かである。

 その原因の一つに、藤井の羽生に対するコンプレックスのなさ、が挙げられるだろう。対戦成績の上でも、藤井は羽生に9勝7敗と勝ち越している、唯一といってよい棋士であるが、私が言うのは数字のことではない。

 藤井にとっては、自身の開発した『藤井システム』が、まだ誰にも破られていない―無論、羽生にも―という自信が大きいのだと思う。藤井自身が、どう指してよいかと迷う、すなわち指す戦法がないということにならない限り、誰に対しても自信を持って臨めるのである。

 対局前夜、地元の天童市と関係者らで催された前夜祭終了の後も、藤井は午後11時過ぎにフラリと控え室に現れ、零時過ぎまで皆と楽しく歓談していた。そこには、前局で逆転のような負け方をした影響も、またあと一つで防衛という気負いも見受けられなかったように思う。

 対して、羽生が前夜祭の後は部屋に入ったままなのも、今シリーズのお決まりのパターンである。

(以下略)

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この時の竜王戦七番勝負は、藤井猛竜王(当時)が4勝3敗で羽生善治三冠に勝ち、竜王位を防衛している。

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藤井猛竜王の羽生善治三冠に対するコンプレックスのなさ。

これは、藤井猛九段の奨励会入会が遅かった(入会の頃、既に羽生三冠は四段になっていた)ことが逆に良い方に作用していたのかもしれない。

また、藤井システムが無敵で、対抗策がまだ見つけられていなかったことも大きかったと思う。

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コンプレックスは心理学・精神医学用語としては「現実の意識に反する感情が抑えつけられたまま保存され、無意識のうちに現実の意識に混じり込んでいるもの」であるが、形容詞としては「複合の、いくつかの部分から成る、合成の」、名詞としては「集合体、複合体」の意味を持つ。

1990年代中盤から後半にかけて、「デジタルコンプレックス室」という新設の部門で仕事をしていたことがある。

初めて組織名を聞いた時は凄い名前だと思ったが、説明を聞いて理解できた。

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将棋世界2001年2月号掲載の竜王戦第5局二日目昼食休憩前の控え室の様子。撮影は中野伴水さん。藤井猛竜王が大庭美夏女流2級(当時)を笑わせているとしか思えない写真。

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