昨日、三浦弘行九段の冤罪事件について、三浦弘行九段と日本将棋連盟の間で和解が成立したことが発表された。
→三浦弘行九段と日本将棋連盟の間で和解成立のご報告(日本将棋連盟)
→日本将棋連盟 三浦九段に慰謝料支払いへ 双方合意(NHK)
→三浦弘行九段と将棋連盟が「将棋ソフト不正疑惑」で和解 慰謝料は非公表(会見詳報)(ハフィントンポスト)
三浦九段が「この問題が長引いて、せっかく将棋界が盛り上がっているのに水を差す形になってしまってはいけない。棋士なら誰しも思っていること」と語っているように、三浦弘行九段側が大人の対応をしたことがうかがえる。
また、佐藤康光会長も、会長となることが決まる以前からこの問題のことで三浦九段への謝罪の気持ちを非常に強く持っており、真摯に取り組んでいることを、私も信頼すべき筋から1月に聞いている。
そのようなことから、佐藤康光九段が会長となってから和解に至るまで、日本将棋連盟側も誠心誠意の提案をしたのだと考えられる。
間近に控える棋士総会でどのような意見が出るかなど、全体的には100%解決したわけではないが、三浦九段とご家族が納得できる形で和解が行われたのなら、三浦九段と日本将棋連盟の間では円満な解決。
三浦九段の名誉回復についてはこれからも日本将棋連盟の継続的努力が必要だけれども、三浦九段への補償などについて一段落ついたことは非常に高く評価できることだと思う。
もちろん、週刊文春の問題など、いろいろと解明・解決すべきと思われる点、昨年10月の常務会の意思決定に至るまでの問題点の洗い出しと総括、そこから引き起こされた信頼感の劇的な低下をいかに回復していくかなどの課題は残されているが、これは外部の者が口を出すべきものでもないし、今後の推移を見守りたい。
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ここからは、昨年10月からの、私がこの冤罪事件について感じていたことを、備忘録的にまとめてみたい。備忘録なので、私が感じたことがまとまりなく書かれているだけのものです。
2016年10月12日
14:30頃
三浦弘行九段が竜王戦挑戦権剥奪のようだとの情報が入る。
我が事のようの全身にショックが走る。「えっ、どうして…」
19:30頃
家に帰って情報について確認すると、対局でコンピュータを使っていた容疑とのこと。
その現場を見つけたのか、本人が認めたのかと思っていると、どちらでもないとのこと。
(証拠もないのにそんなこと決めてしまったの?そんなの、ありえない)
私に情報を知らせてくれた方も、どう転んでも将棋界にとってはマイナスと心配をされていた。
私も同意見。
20:00頃
ネットなどに一斉にこの件のニュースが流れる。
翌週の週刊文春で公開されていない情報も含めて大きな記事になるという。
三浦九段がそのようなことをやるとはどうしても思えないし、暗澹たる気持ちになる。
10月14日
明日は竜王戦第1局。普通なら「第29期竜王戦第1局対局場 天龍寺」と昼食予想の記事を書くところなのだが、どうしてもそのような気は起きない。
- 12日の15時までの期限に休場届けが出なかったから休場処分にしたとか訳のわからないことが常務会から発表されているが、15時以前に、私のようなところにまで「竜王戦挑戦権剥奪」の情報が流れてきている。15時までの期限も何も、はじめから三浦九段を出さないように決めているんじゃないか
- そもそも、その週の土曜日に第1局の対局がある挑戦者を11日に呼びつけて集団で詰問するとはありえない。何事もなく終わったとしても、それが大事な対局を控えた棋士に対する態度だろうか。将棋をやる者の姿として、絶対にあってはならないことだ。
- どのような結論になったとしても、証拠もないのにこのような重大な結論を下したというのは全くやってはならないこと。コンプライアンス的にはもちろん、人間としてやってはいけないことだ。
などのこともあり、昼食予想の記事は、この竜王戦七番勝負に関しては積極的に書かないことにした。書く気が起きなかった。
10月15日
将棋ペンクラブ幹事会。
事前に打ち合わせをしていたわけでもないのに、3人の重鎮幹事が、「証拠もないのに常務会があのような決定をしたのは絶対におかしい」との意見。
私と同じ感じ方をしている人は多いんだなあ、と感心するとともに、よくよく考えると、普通は皆このように考えるだろうと思った。
10月20日
週刊文春の発売日の午前0時、羽生善治三冠が、奥様の理恵さんのTwitterアカウントを通して発言。
→羽生善治五冠(当時)と畠田理恵さんの出会い の記事の下の方
非常に心が救われる思いがした。
同様に、丸山忠久九段の翌日の発言も、非常に心が救われた。
→速報!将棋不正疑惑問題で棋士説明会 丸山九段「連盟対応は疑問だらけ」(スポーツ報知)
この2つの発言は将棋界のためにも非常に良かったと思う。
この日に発売された週刊文春は扇情的なタイトル、内容で呆れる。週刊新潮も。
10月某日
アカシヤ書店の星野さんのところにテレビ局から取材の電話が入り、私が紹介されたようで、制作会社から私に電話があった。
「スマホで動く将棋ソフトはどれくらい強いですか?」という取材のようだった。私向きではない内容だが、
「強いとは聞いていますが、三浦九段はトップクラスの棋士で、そのようなものを使う必要もありませんし、使うような人でもないと思います」
と答えた。後で調べるとその番組は真面目な方向性の番組であり、酷い報道はしていなかったが、それでも、スマホを使って動かせるソフトは非常に強い、という話をしか取材の展開上は聞きたくなかったようだ。
もちろん私の話したことなど、微塵も放送では紹介されなかった。
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以上、当時のことを思い出しながらの備忘録。