将棋世界2003年5月号、高野秀行四段(当時)の「第16期竜王戦」より。
28連勝、不滅の連勝記録を持つ神谷が田村と対戦。神谷の持ち味は「攻撃的な受け」。相手に攻めさせ、ギリギリ眉間で受け切るのが得意技。親友中村の受けはつとに有名だが、神谷も隠れた名手なのだ。
本局は田村の初手▲5六歩に神谷が三間飛車と相振り飛車に。開始間もない3図。
ここで気合とばかり、ノータイムで▲5四歩。両者顔を見合わせ、苦笑い。
これに対する受けを参考にしていただきたい。
3図以下△6四歩▲5三歩成△同金直▲5四歩△6三金寄▲6四銀△5四金▲5五銀△6五金▲2六飛△2四歩▲4六銀△3三角▲7四歩△6六歩で後手優勢。▲5四歩を△同歩として素直に応じるのはつまらない。△6四歩がこの際の手筋。▲5三歩成から攻勢を掛けるが、攻めているのではなく、攻めさせられている感じ。△5四金~△6五金と金に威張られては辛い。最後の△6六歩も角道を止める好手で神谷快勝。感想戦で一言「これで潰れたらプロじゃない」。らしさを発揮し、ベスト8へ。
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神谷広志七段(当時)と田村康介五段(当時)。
見ただけでも迫力満点の二人が、3図から▲5四歩の局面で「両者顔を見合わせ、苦笑い」なのだから、映画のシーンになりそうな光景だったのだろう。
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最近は中飛車左穴熊が多く指されているので、先手の右銀と左銀は逆ではあるが、相振り飛車で3図のような局面になることも多いと思う。
この神谷七段の受けは、そのような際に非常に参考になる。
とはいえ、「相手に攻めさせ、ギリギリ眉間で受け切る」という神谷七段ならではの技なので、アマチュアがとても真似をできるような手順ではないような感じもする。
例えば4図から▲6六同歩△7六金▲7九角のような変化はどうなるのか(きっと△4五歩から凄い戦いになるのだと思うが)など、心臓に悪そうな戦いだ。
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神谷八段のサインは非常にユニークなものが多いので、名企画だと思う。
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