将棋マガジン1984年8月号、川口篤さん(河口俊彦六段・当時)の「対局日誌」より。
丸田が勝った。私が「強いもんですねえ」というと「君はまた金星を上げた、なんて書くんだろう」
「夕食をおごってもらいましょうかね」
「金星のことを書かなければご馳走するよ」ということで、広津と三人でそば屋へ行った。
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この時、丸田祐三九段は64歳。順位戦はB級2組、しかも前年度はB級1組だった。
そういうわけなので、普通であれば誰に勝っても金星とはならないところ、64歳という年齢面から、勢いの良い若手棋士に勝った時などは金星と書かれてしまっていたのだろう。
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丸田九段は76歳11ヵ月で最後の対局を行い77歳1日で現役を引退。
長らく現役の最高齢記録を保持してきたが、昨年の6月に加藤一二三九段が記録を更新(77歳5ヵ月)している。
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それにしても、
「君はまた金星を上げた、なんて書くんだろう」
「夕食をおごってもらいましょうかね」
「金星のことを書かなければご馳走するよ」
の一連の会話は、まさに阿吽の呼吸で、芸術的でさえある。
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藤井聡太七段については、東京スポーツが2018年1月16日の記事で、
藤井聡太四段(15)が14日、名古屋市で指された朝日杯オープン戦本戦準々決勝で佐藤天彦名人(29)を破る金星を挙げた。(中略)藤井四段はこれまで羽生2冠と非公式戦のみで対戦があり、1勝1敗。公式戦で栄誉賞棋士を破れば特大の金星。
と書いている。
→名人撃破の藤井聡太四段 次は国民栄誉賞の羽生2冠から大金星狙う(東スポWeb)
サンスポは準々決勝で佐藤天彦名人を破った段階で大金星と書いている。
→名人に勝った!藤井四段、タイトル保持者と初対戦で大金星 準決勝は羽生二冠/将棋(SANSPO.COM)
ネットで調べる限りは藤井聡太七段の勝利を金星と位置付けている記事はこの2つの記事が最後。
その後の昇段と実績で、藤井聡太七段は、もう誰に勝っても金星とは言われないようなところまで到達していることは間違いないだろう。