棋士が仕事をしている月間総時間

将棋マガジン1985年12月号、谷川浩司前名人(当時)の「谷川浩司の365日」より。

 いよいよ対局シーズン。今月は8局だが、王座戦、順位戦、十段戦、と持ち時間が長い将棋が多く、しかも、対戦相手が全て名人・A級なので、やや疲れ気味だった。同じ相手と3局連続は、さすがに初めてである。

 試しに、対局や原稿など、仕事をしている時間を計算してみた。今月は160時間。移動などを含めると、200時間ぐらいである。一日平均では6時間ちょっと。

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谷川浩司前名人(当時)の毎日の出来事を2ページに渡って綴るという連載。後に毎日はあまりにも、ということで主要なことがあった日のみの記述に変わっている。

この月(1985年9月)の谷川前名人の対局は王座戦挑戦(東京、有馬)とJT杯日本シリーズ(福岡)と関西将棋会館での5局の、合計8局。

同じ相手と3局連続は、対 有吉道夫九段戦。

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対局がない日の典型的な過ごし方は、

「原稿書きと棋譜並べを10数局」「原稿書き、詰将棋創作、棋譜調べ、手紙書きなど」で、これは仕事をしている時間に該当するだろう。

研究会はこの月は行われていない。

遊びの方は、

ゴルフ、神吉宏充四段(当時)と一緒にサザン・オールスターズのコンサート、対局後飲みに行く、など。

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月間160時間というと、週休2日で月曜から金曜まで9時~18時勤務(昼休1時間)と同じだが、移動などを含めた200時間となると、週休2日で月曜から金曜まで9時~20時勤務(昼休1時間)。

このように見ると、労働時間がかなり多いイメージだ。

仮に対局数が少なかったとしても、その時間を研究などにあてるだろうから、やはり総時間はあまり変わらないのかもしれない。

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後年、次のような考え方も出ているが、この場合でも勉強を労働時間に含めると月間180~210時間になる計算。

佐藤康光竜王(当時)「休み?休みなんか要るんですか。だって勉強は労働じゃないでしょう」