幻となった関西棋道文化会館

近代将棋1973年3月号グラビア、「関西棋道文化会館(地上12階、地下2階)いよいよ着工」より。

 升田九段が館長で発足する大阪の関西棋道文化会館は去る12月24日に地鎮祭を行い、いよいよ工事にかかった。完成は今年いっぱい、完成のあかつきには日本将棋連盟関西本部が9階(763平方m)に入居する話もすすめられている。なお、升田九段はお元気で近く棋戦にも出場される予定。

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近代将棋同じ号の原田泰夫八段(当時)の「棋談あれこれ」より。

 2月号の本誌グラビヤに「升田九段が池袋道場へ」ファンは大喜びと出ている。

「大阪に建てる関西棋道文化会館は12月24日に地鎮祭をする」「30億の費用がかかったが、こういう会館は必要なので、東京をはじめ各地につくりたい」さすがは升田さん。すばらしい構想と実行力である。

 本部理事会で計画実行したいと思っても、踏み切れないことを、升田さん個人でやるとは偉い。完成して教室や道場が誕生すれば、普及発展になり、関西ファンに喜ばれる。

 人生劇場の「やると思えば、どこまでやるさ」歌詞を思い出す意気や壮。沈滞した空気を破る快ニュースである。

 12年前、約6千万で千駄ヶ谷に将棋会館を造ったのは大仕事であった。この時は加藤治郎先生と升田さんが特にがんばった。金の価値が低くなったと言っても、30数億とは凄い。立派に完成することを祈りたい。

(以下略)

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ところが、この関西棋道文化会館の話はなくなる。

将棋世界2015年7月号の「内藤國雄九段 酒よ、夢よ、人生よ さらば将棋」に内藤國雄九段の談話が載っている。

「升田さんは威張るのが似合っていてねえ。どこででも威張るからスキができて、人に利用されるんです。昔、関西棋道会館を建てるという話があってね。関西将棋界が恵まれるようにという思いで生まれた話ですが、棋士はみんな無関心でね、升田さんが気の毒になって私も株主になったんですが、金集めに利用されてすぐに倒産した。私も出資金を300万円ほど出していました。でも、升田さんのことは大好きだったから、何とも思っていませんけどね」

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計画倒産だったのだろう。升田幸三九段が出資の広告塔となってしまった形。升田九段も被害者だ。

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関西本部の入居が予定?されていた9階の763平方m。

現在の関西将棋会館の延床面積が1800平方mなので、半分弱の延べ面積。対局室と執務室を合わせたくらいの広さとイメージすれば良いのだろう。

他のフロアに道場や教室などのスペースがあるとしても、地上12階、地下2階は凄い。

とはいえ、絵に描いた餅なので、考えるのも虚しい。

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心機一転、升田九段は、1978年に関西将棋会館建設委員に名を連ねている。