実力がありながら昇級が遅れていた棋士達が一斉に上がった年

将棋世界2004年5月号、河口俊彦七段(当時)の「新・対局日誌スペシャル 第62期順位戦最終局」より。

 これで総てが終わった。全体を振り返ると、一つの現象に気が付く。

 それは、実力がありながら昇級が遅れていた人達が、いっせいに上がったこと。屋敷九段を代表格に、深浦八段、行方七段、堀口七段、山崎五段などで、まるで地殻変動が起こったかのようである。みんな谷川・羽生に大勝負で敗れているが、その壁を破ったとき、将棋界は新しい時代を迎える。今期の勢いを見ると、それも遠い日のことではないように思える。

* * * * *

このときの順位戦昇級棋士は次の通り。

〔B級1組→A級〕
深浦康市七段
高橋道雄九段

〔B級2組→B級1組〕
行方尚史六段
堀口一史座六段

〔C級1組→B級2組〕
屋敷伸之八段
野月浩貴五段

〔C級2組→C級1組〕
山崎隆之五段
宮田敦史四段
千葉幸生四段

実力がありながら昇級が遅れていた複数の棋士が同じタイミングで揃って昇級したのだから、時代に新しい風が吹いてきたと感じることができる瞬間だ。

* * * * *

実力がありながら昇級が遅れていたと言われていた棋士のそれぞれのクラスの期間は次の通り。

深浦九段は
C級2組 6期
C級1組 1期
B級2組 3期
B級1組 2期 ←2004年3月の時点

行方八段は
C級2組 5期
C級1組 2期
B級2組 3期 ←2004年3月の時点
B級1組 3期

屋敷九段は
C級2組 1期
C級1組 14期 ←2004年3月の時点
B級2組 4期
B級1組 3期

山崎八段は
C級2組 6期 ←2004年3月の時点
C級1組 2期
B級2組 2期
B級1組 10期

屋敷九段は奨励会三段リーグもC級2組も1期抜け。最年少でタイトルも獲得したのにC級1組が14期。

屋敷伸之八段(当時)がC級1組からB級2組へなかなか上がれなかったことは「将棋界の七不思議」の一つとされていたという。

深浦九段も行方八段も山崎八段もC級2組で苦労したのが共通点。

山崎八段のA級昇級は多くのファンが心待ちにしていることだろう。