羽生善治四冠(当時)「ここのところ森内さんとのタイトル戦はいまいちかみ合わなかった」

将棋世界2005年7月号、第63期名人戦〔森内俊之名人-羽生善治四冠〕シリーズ前半を振り返る「面白くなる予感」より。佐藤康光棋聖と郷田真隆九段の特別座談会。

―最後にシリーズの今後の展望を。

郷田 羽生さんは開幕前、「ここのところ森内さんとのタイトル戦はいまいちかみ合わなかった」というコメントがありました。しかし、このシリーズは第3局までの将棋を見るかぎり、お互いの長所がところどころに表れています。第4局以降も”かみ合った将棋”が期待できるでしょう。クロスゲームになりそうで、とても楽しみです。

佐藤 第1局から第3局まで、これだけ内容が詰まっていると、見るほうも大変ですよね(笑)。そういう意味では、これまでで一番かみ合っている勝負だと思います。少なくともこの2年ぐらいの中では。

郷田 第1局、第2局は、森内さんにプレッシャーの大きい将棋といえましたが、第3局を勝って勝ち越し。次の第4局は逆に羽生さんがプレッシャーの大きい勝負になると思います。

佐藤 羽生さんは、持将棋指し直しの激戦となった棋聖戦の挑戦者決定戦から、中1日で名人戦第3局の移動でした。だからこの1週間はかなり体力的に厳しかったのではないでしょうか。羽生さんはこれまでそういう状況を逆にプラスに変えていたところがありますが、10代や20代の頃とは違うんですから(笑)。しかし、第4局以降は羽生さんも気持ちを立て直すでしょうし、さらに面白い勝負を見せてくれると思います。

郷田 お互いに力をふりしぼっているという部分が見受けられますので、これがもっと凄くなると、とてもいい名人戦になると思います。その可能性は十分あります。

―ありがとうございました。

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「かみ合う」は「読み筋が合う」と同じ意味と捉えていいのだろう。

羽生善治竜王と郷田真隆九段と森内俊之九段のそれぞれの読み筋の相性について、1994年に先崎学六段(当時)が解説をしている。

羽生善治五冠(当時)と読み筋の合う棋士、合わない棋士

佐藤康光九段も、自分の読み筋について2001年に語っている。

佐藤康光九段「実は、ぼくは誰とも読み筋が合いません」

羽生竜王と郷田九段の読み筋は合っていて、佐藤九段も2010年代になって郷田九段と読み筋が合うようになったという結論になる。

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佐藤康光棋聖(当時)と郷田真隆九段の検討をしている時の写真が、将棋世界のこの記事に載っている。

キャプションには「気になる変化を見つける度に、取材を忘れて二人だけの世界へ…」と書かれている。

今すぐには無理だろうが、可能性は非常に低いだろうが、いつの日にか、羽生世代棋士だけの研究会をぜひやってほしいと、個人的には強く思っている。

二人の検討の様子