近代将棋1982年11月号、「関東奨励会」より。
奨励会員も楽しい夏休みを楽しんだことであろう。そこで裏話を一つ。
秘話 奨励会版「青い山脈」
奨励会員も十代の不健康な男である。好きな女性も出てこよう。ところで某奨励会員がある女性に恋をした。自分の気持ちをなんとか相手に伝えようと思ったところ、ラブレターという手が最善手に見えた。(結果的には敗着であったが)漢字に自信のない彼は辞書とにらめっこで慎重を期してポストに手紙を投げ入れた。が、やはりなんとなく不安である。そこでなにげなく先輩にたずねてみた。「あのー、『ぼく』という字は『撲』でいいのですよネ」
その後、彼の初恋がどのような結果に終わったかはみなさんの想像におまかせする。
いよいよ秋の陣である。夏休みは終わった。気持ちを入れ替えてがんばれ。
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『青い山脈』に出てくるラブレターは偽のラブレター(新子という女学生に反感を持った同級生の女学生が男性の名前で書いた)で、「変しい変しい新子様」などのような誤字が含まれていた。
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誤字だけで恋が成就しなくなるものなのかどうかは分からないが、うまくいく時は誤字があろうがなかろうがうまくいくと思う。
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現代は、誤字よりも変換間違いやタイプミスの方が多いだろう。
ただし、何も見ないで直筆の場合は、昔よりも誤字率は高くなっているかもしれない。
「僕」という漢字、昔は書けたが、今は自信がない。