将棋よりもゴルフに現れる棋士の性格

将棋マガジン1988年5月号、大内延介九段の「大内流振り飛車穴熊指南」より。

 プロ棋士の間では最近ゴルフ熱が高まっていて、将棋連盟では年に4回ゴルフコンペを開いている。

 将棋に棋風があるように、ゴルフでもその人の性格が実によく表れて面白い。

 私のは、米長邦雄九段に言わせると”原始中飛車みたいなゴルフ”だそうである。まず練習はしない。習わないから自己流。おまけに左利きなのでレフティときている。足腰は登山で鍛えた自信があるから、クラブを思い切り振り回す。だから米長九段は「そのフォームはとても頭脳労働者とは思えない」と、笑うのである。

 米長九段は将棋の棋風そのままに、潔く豪快だ。常にピンを狙うから、大きなミスも多いがバーディーを取ったりして、波乱万丈で楽しい。

 ○○九段は常にマイペースを保ち、ゆったりと構えている。いい結果が出ようが出まいが、微笑を絶やさず優雅そのものだ。

 面白いのは○○七段でこの人は何につけ、自慢ばかりする。

「300ヤード飛ばし、プロもびっくりしたよ」「覚えて3ヵ月で、もう今の実力だからね」

 だれも聞いていないのに、賑やかこの上もない。あまりうるさいときは「高いニギリでいきましょう」と脅かせばよい。

「延ちゃん、そうムキになるなよ」と、途端に冷静になったりする。

 ○○さんは堅実な人生観そのままに、小さく刻むのが特徴で、グリーンオーバーしたのを見たことがない。大きな失敗もしないかわりに、スリルもない。ガーンと飛ばすところにゴルフの醍醐味があると思うのだが、それでも本人は結構楽しそうだから、やはり個人の性格というものはどうしようもない。

 ○○大先輩は、別名”早打ちマック”である。実生活でもじっとしているのが嫌いで、バリバリと何でも片付けてしまう。

 ゴルフでもボールがどこに飛ぼうがおかまいなしに、ひたすら早打ちを続けるのである。

 パットもそうで、ボールの前に立った瞬間にはもう打っているから、カップの周りで三角形を幾つも描いている。その先生の将棋からは考えられない光景だ。

 棋士は一日中部屋にこもり、しかも盤の前に座りっぱなしである。

 だから時折、大自然の中に出て、童心にかえってボールを追ってみたくなるのである。

(以下略)

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「○○九段は常にマイペースを保ち、ゆったりと構えている。いい結果が出ようが出まいが、微笑を絶やさず優雅そのものだ」

これは98%の確率で二上達也九段のことだと思う。

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「面白いのは○○七段でこの人は何につけ、自慢ばかりする」

これは100%の確率で剱持松二七段(当時)。

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「○○さんは堅実な人生観そのままに、小さく刻むのが特徴で」

ここだけがわからない。

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「○○大先輩は、別名”早打ちマック”である。実生活でもじっとしているのが嫌いで、バリバリと何でも片付けてしまう」

これは大山康晴十五世名人以外に考えられない。

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このすぐ後に、講座は「大山十五世名人は振り飛車の権威であると同時に、振り飛車退治の大家でもある」と続く。

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