NHK将棋講座2019年9月号「橋本崇載八段-大石直嗣七段戦」観戦記

今日は、NHK将棋講座最新号の発売日。

◯表紙は、将棋フォーカス司会の、高見泰地七段、都成竜馬五段、向井葉月さんのイラスト。

○グラビアは「将棋フォーカスがもたらした潤い」。福島県相馬市で行われた「公開復興サポート 明日へ」の模様。高見泰地七段、都成竜馬五段、向井葉月さん、菅井竜也七段、鈴木環那女流二段の出演。

○もう一つのグラビアは、「将棋日本シリーズ 東日本大震災復興支援JT応援プロジェクト in 盛岡」の模様。高野秀行六段、金井恒太六段、鈴木環那女流二段、山口恵梨子女流二段、和田あき女流初段の出演。

○「平成の勝負師たち 第6回 八代弥七段」、文は小暮克洋さん。故郷への思い、同世代のライバルに対する思いなど、興味深い話題が満載。

○講座「菅井流やんちゃ振り飛車」の9月のテーマは、「先手中飛車の戦い」。先手中飛車は、石田流と並ぶやんちゃ流振り飛車のエース戦法。最後のコラム「NHK杯戦で感じた我が師の恩」では師匠の井上慶太九段との思い出が描かれています。

○後藤元気さんの連載「志尾木団地はたそがれて」。将棋をテーマとした不思議な面白さのある小説。不気味な小学校時代の恩師が登場する。

◯後藤元気さんの「渋谷系日誌」は、今年の名人戦第4局2日目、東京の将棋会館で行われた渡辺明二冠(当時)の大盤解説会のこと、その後に行った記者室でのこと、場所を変えて近くの店で木村一基九段、稲葉陽八段などと飲みながら観戦したこと、そこに最後は渡辺三冠が合流したことなど。

○「向井葉月のしょうぎ大好き!」。指南役は中村太地七段。向井葉月さん向けに向かい飛車の序盤の指南。

○10月からのNHK将棋フォーカスでの講座、中村太地七段の「太地隊長の角換わりツアー」の紹介。聞き手は加藤桃子女流三段です。

○段・級位認定 次の一手問題

○おたよりの広場

○「拝見!将棋教室」は「宮城・杜の都加部道場子ども教室」。私が書かせていただきました。加部道場出身の加藤結李愛女流1級の談話、写真も載っています。

○女流棋士のよもやま話(第6回 山口絵美菜女流1級)は、山口絵美菜女流1級がミュージカルに魅せられてしまった話。

○「今月のピックアップ・データ」は通算勝数ベスト10など。

○「LPSA cafe Minerva」(島井咲緒里女流二段)は「ハート将棋」について。

○「将棋フォーカスプレイバック」は、7月28日放送の「棋士を映す鏡 揮毫」。

○「重箱のスミ」クイズ

○付録は、及川拓馬六段の「勝手読み解消 詰ドリル 2手詰 Step2」。初級者にも最適なユニークな2手詰。

〔NHK杯戦観戦記〕

◯1回戦第13局 片上大輔七段-三浦弘行九段

「駒音の名残」 観戦記:北野新太さん

◯1回戦第14局 橋本崇載八段-大石直嗣七段

「力戦の構想力の激突」 観戦記:私

◯1回戦第15局 高崎一生六段-里見香奈女流五冠

「相振り飛車の完封劇」 観戦記:雨宮知典さん

◯1回戦第16局 近藤誠也六段-阿久津主税八段

「有言実行の踏み込み」 観戦記:小田尚英さん


今月号には私が書いた観戦記(橋本崇載八段-大石直嗣七段戦)が掲載されています。

対局前の控え室、感想戦でのこと、後日の談話など、テレビには映らなかったエピソードも盛り込んでいます。また、大石流ダイレクト向かい飛車と佐藤康光流ダイレクト向かい飛車の違いにも触れています。

NHK将棋講座2019年9月号、ぜひご覧ください。

NHK将棋講座 2019年 09 月号 [雑誌]
 

夕食休憩前に終了しそうな対局で、あえて注文された夕食メニュー

将棋世界1988年12月号、青島たつひこ(鈴木宏彦)さんの「駒ゴマスクランブル」より。

 勝負は分からない、ということが分かった。

 竜王戦決勝七番勝負が始まった。決勝の組み合わせは米長九段対島六段。

 準決勝三番勝負の第1局を米長九段と中原王座が勝った時はそのまますんなり行くものとばかり思っていたのだが、島の爆発力は想像以上のものがあったようである。

 中原-島の準決勝三番勝負、第1局の将棋を観戦させてもらった時、印象に残るシーンがあった。

 午後4時半、局面は1図だったと思う。塾生君が夕食の注文を取りにきた。

 形勢は大差で先手がいい。島はすっかりあきらめた顔をしているし、手にも力が入っていない。こうなってしまった時の島は正直だ。

 常識的には十中八、九、いやそれ以上の確率で夕食休憩前の終了が予想されるケース。いかに大一番とはいえ、ここで先手側で指していて夕食を注文する棋士は少ないはずである。(それにもし夕食休憩に入れば、外に食事に行く手だってある)まあ、注文するとしても軽く蕎麦くらい頼むのが普通と思う。

 が、中原王座は表情一つ変えるでもなく、食事の注文をした。「2,000円の天丼と赤だしね」

 島は苦笑しながら「僕は結構です」

 将棋は午後5時8分に終わった。もちろん中原王座の勝ち。

 記者はこの注文、中原王座が島に対してダメを押したものだと思った。「いくら粘ってきてもこっちも慌てませんよ」という意味かなと。しかし、感想戦が終わった後、中原王座は笑いながらこういった。(食事注文をしないで)「相手を刺激しちゃいけないからね」

 いうまでもなく、島は中原王座にとっては日頃から可愛がっている弟弟子。島から見たら中原王座は兄弟子というより大先輩。その弟弟子に対して、なんとまあ慎重な姿勢。

 記者はこの時、この準決勝は中原王座が絶対に勝つと思った。が、あにはからんや、その結果は…。勝負というのは分からないものである。競艇や競輪の予想屋さんが、自分で舟券や車券を買わないのも、もっともだと思う。

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第1期の竜王戦なので、準決勝三番勝負は通常の期の挑戦者決定三番勝負にあたる。(もう一方の山でも準決勝三番勝負が行われている)

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たしかに、対局中、外へ食事に行けた時代なので、「注文なし」だったとしても、相手に何の刺激を与えるものでもない。

なおかつ、書かれている通り、簡単に麺類を注文しても済んでいたはずだ。

「相手を刺激しちゃいけないからね」ということはあったかもしれないが、盤上も盤外も自然流の中原誠十六世名人のことなので、純粋に天丼を食べたかっただけとも考えられる。