将棋世界1990年5月号、読者のページ「声の団地」より。
(千葉市 Fさん 主婦37歳)
将棋界の未来を考える時、将棋人口の減少が予想されて憂慮してしまう。将棋が衰退の方向にあるとすれば、そのストッパーとして女性も一役買いたい。
知的で優秀な男性群の多くは、労働時間に追われ余裕のない生活である。若者や子供達は多様化した遊びや物に目を奪われている。そこで、オバタリ…いやマドンナと呼ばれる中年女性層に、将棋のほうでも活躍して欲しいものだ。
たとえば主婦のかかえる人脈は貴重だと思う。実子に与える影響は大きい。地域社会との繋がりもあるので、いざ普及となると力強い。ついでに適齢期の男性将棋ファンには縁談の一つ二つ紹介できそう。
しかし現実になんの予備知識もない女性が一から将棋を覚えるのはたいへん。やはり身近な恋人かご主人が、根気よく教えてあげて欲しい。縁台将棋が途絶えた今、将棋は家庭から、と言いたい。
具体的にひとつ提案だが、ご主人は将棋関係の本、雑誌類はたくさん買い込んで家中にバラまいて欲しい。棋譜を読むだけでなく、おもしろい記事を奥さんに読んでもらうため。
何年も記事だけを読み続けていても、いつかは▲7六歩△8四歩▲2六歩という所も目に入ってくるはず。将棋が駒落ちで夫婦で遊べるようになると本当に楽しい。夫婦でじっくり将棋に取り組んでみたらどうだろう。
棋界には名人を頂点にスマートでカッコイイ棋士が溢れている。どの世界のスターにも劣らないすばらしい男性がいる、女性は目を向けて欲しい。ひとたび女性が将棋をものにすれば、男性のように爆発的に力を出すことはなくても、永続的で根強い活動が出来ると思う。人口の半分は女性である。女性にもっと将棋を売り込み、棋界の底辺の幅を広げたい。
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カルチャーセンターで子供たちに将棋を教えるようになって、子供たちのお母さん、お父さんと話をするようになって、ここで千葉市のFさんが書かれていることが本当に大事なことだと感じている。
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大会によっては、出場している父兄が大会の運営を手伝っているケースもある。
また、お子さんが一生懸命やっているので、自らも将棋を覚えて指し始めるようになったお母さんもいる。
お嬢さんが将棋を始めて、その相手をしているお父さんが、お嬢さんに負けないようにカルチャーセンターに通い出したケースもある。
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このようなお母さんたちは、指せる人は観る将ではなく指す将、指せない人は観る将にも指す将にもならなく、自分の子供の成長を見守っている。
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観る将の方々のためのイベントは増えたが、このようなお母さん、お父さん、ご主人と将棋を楽しみたい奥様、が特に楽しめるような催しも必要なのではないかと、最近考え始めている。
良いアイデアがすぐに浮かぶわけではないが。