NHK将棋講座2020年1月号「近藤誠也六段-深浦康市九段戦」観戦記

今日は、NHK将棋講座最新号の発売日。

◯表紙は、佐藤康光九段のイラスト。

○「平成の勝負師たち 第10回 佐藤康光九段」、文は上地隆蔵さん。トップクラスのプロと日本将棋連盟会長の両面を持つ佐藤康光九段の思いが語られている。佐藤康光九段ファンは必読の内容。

○講座「太地隊長の角換わりツアー」の1月のテーマは、「AIが将棋観を変えた新時代」。人間の感覚では手薄に思えた手筋や手順を有力と評価するようになってからの角換わりについて解説されている。

○後藤元気さんの連載「志尾木団地はたそがれて」。将棋をテーマとした不思議な面白さのある小説。志尾木を「しおき」だとばかり思っていたが、先日突然、「しおぎ」で将棋にかけているということに気がついた。

◯後藤元気さんの「渋谷系日誌」は、木村一基王位誕生の日の控室の模様、NHK杯 木村一基王位-森内俊之九段戦の控え室の様子が描かれている。

○「向井葉月のしょうぎ大好き!」。指南役は中村太地七段。向井葉月さん向けに形勢判断のしかたについて指南。

○段・級位認定 次の一手問題

○おたよりの広場

○「拝見!将棋教室」は「福岡・福岡将棋会館将棋教室」。文は関口武史さん。

○女流棋士のよもやま話(第10回 野田澤彩乃女流1級)は、野田澤女流1級がよく揮毫をする「挙禅一如」についてなど。

○「今月のピックアップ・データ」はタイトル初獲得年長者トップ5。

○「LPSA cafe Minerva」(蛸島彰子女流六段)は将棋界、囲碁界での若手女流棋士の活躍についてなど。

○「将棋フォーカスプレイバック」は、10月27日放送の「百折不撓の男 木村一基」。

○「重箱のスミ」クイズ

○付録は、飯塚祐紀七段の「いいね そうだね 考えてみようね①初級編」。初級者に最適な内容。8枚落ですぐに直面する悩みに丁寧に応えている。

〔NHK杯戦観戦記〕

◯2回戦第11局 近藤誠也六段-深浦康市九段

「大きかった一手の遅れ」 観戦記:私

◯2回戦第12局 羽生善治NHK杯-屋敷伸之九段

「屋敷が完勝」 観戦記:小暮克洋さん

◯2回戦第13局 糸谷哲郎八段-千田翔太七段

「森門下対決!」 観戦記:椎名龍一さん

◯2回戦第14局 森内俊之九段-木村一基王位

「40代は元気よく」 観戦記:小田尚英さん


今月号には私が書いた観戦記(近藤誠也六段-深浦康市九段戦)が掲載されています。

対局前の控え室、感想戦でのこと、後日の談話など、テレビには映らなかったエピソードも盛り込んでいます。また、相掛かりの先手・後手の浮き飛車・引き飛車の組み合わせの歴史についても、少しだけ触れています。

NHK将棋講座2020年1月号、ぜひご覧ください。

NHK 将棋講座 2020年 1月号 [雑誌] (NHKテキスト)

 

第3期竜王戦、羽生善治竜王、谷川浩司王位、直前直撃インタビュー

将棋世界1990年12月号、「第3期竜王戦 直前直撃インタビュー、羽生竜王に聞く」より。

竜王戦第1局の1週間前、免状に著名する羽生竜王と、ホテルの部屋で原稿を執筆している谷川王位。将棋世界同じ号、撮影は炬口勝弘さん。

―海外での対局ですが?

羽生 今回が3度目ですか。これから、どんどん増えていけばいいですね。勝手が違う所の対局場なので、心配もあるのですが、1局目ということで、そんなに気にはなりません。丁度いいと思います。

―調子はどうですか?

羽生 良くもなく悪くもなくという所です。シリーズが始まり、進んでいくに連れて昇り坂になるようにしたいな、と思っています。

―去年と今年、自分自身どこが違うと思いますか?

羽生 今年はそれほど緊張なくこれています。そこが去年とは一番違いますね。1ヵ月前、挑戦者が決まった頃はとても緊張していました。今は、開幕まであと1週間もないというのに、近づくにつれてかえってボンヤリしてそれほど緊張していません。

―去年と今年、ご自分は強くなっていると思いますか?

羽生 うーんそうですね。まあ、総合的な面では強くなっていると思いたいですね。

―谷川王位という相手についてはどうですか?

羽生 タイトル戦という舞台で教えて頂きたいと思っていた相手ですが、こんなに早く実現するとは思ってもみませんでした。しかも、まさか私の防衛戦でとは思いませんでした(笑)。

―今シリーズは、どのような戦いになるでしょう。

羽生 2日制で持ち時間も長いし、序盤から気の抜けない戦いになると思います。居飛車での戦いになるとは思いますが、何をやるかはハッキリとは決めていません。谷川先生も矢倉、相掛かり、角換わりと色々やるので戦型の予想は立てにくいと思います。ただ、振り飛車はないでしょう。

―最後に今シリーズの抱負は?

羽生 4月から4連敗してしまい、ファンの方には心配をかけましたので……。この竜王戦で調子を戻したいと思っています。

将棋世界同じ号、「第3期竜王戦 直前直撃インタビュー、谷川王位に聞く」より。

―初の海外ですね。

谷川 どうも、旅行とか観光という方にばかり頭がいってしまって、竜王戦の第1局ということが頭の隅っこにいってしまっています(笑)。お祭り気分が抜けて、腰を落ち着けた戦いは第2局からということになるでしょう。もっとも、対局が始まってしまえば、同じこととは思いますが。

―ハードスケジュールをこなしてきたわけですが、現在の調子はいかがですか。

谷川 好調が続いています。この間、珍しく中4日の対局となりました。それまではずっと中1日、王座戦がなくなった分、そこで休養していたので、だいぶ元気になりました。

―羽生善治という相手について。

谷川 今期に入って成績が良くないようですが、若手がタイトルを取ってその後、勝てなくなってしまうというのは誰もが経験することです。私自身もそうですが、調子のいい時、悪い時というのは必ずあるものです。だから、今こっちが良くて相手が悪くても安心はできません。欲を言えば、あと2ヵ月、この状態であって欲しいと思います(笑)。

―どのような戦型になりますか?

谷川 相矢倉がメインで、あとは角換わりと相掛かり。振り飛車はないと思います。

―シリーズの抱負は。

谷川 昨年、羽生竜王が誕生した時、その日の衛星放送で今一番戦いたい相手であると言いました。それが、実現したことが一番嬉しいです。対戦成績は2勝6敗と負け越していますが、そのすべてが4時間以下の短い対局です。今回は8時間なので、違った面が出るのではと思っています。福崎八段、田中寅八段、高橋九段と、最初の5局から10局ぐらいのうちに負け越してしまう相手が多いのですが、そういう人達に対して少しずつ借りが返せています。羽生竜王に対しても同じであればいいな、と思っています。

―最後に谷川ファンへ。

谷川 今勝っていることが、勢いというのではなく、これが本物でなければいけないと思います。それを証明するためにも、竜王戦を勝たなければいけませんね。

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竜王戦七番勝負、第1局は竜王戦としては初の海外対局(フランクフルト)だった。

羽生善治竜王(当時)は森雞二九段の研究会の旅行で海外に行ったことがあるが、谷川浩司王位(当時)にとっては初の海外だった。

* * * * *

谷川王位の「欲を言えば、あと2ヵ月、この状態であって欲しいと思います」が可笑しい。

…が、実際にはこの通り(谷川王位が4勝1敗で竜王位を奪取)となっている。

* * * * *

「今期に入って成績が良くないようですが、若手がタイトルを取ってその後、勝てなくなってしまうというのは誰もが経験することです」

渡辺明三冠などの例外もあるが、このような傾向が存在する。

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この頃に行われた職団戦でアンケートをとった結果が、同じ欄に載っている。500人のファンの声は、

①5年後の名人は?

谷川浩司(222通・1位)、羽生善治(186通・2位)

②竜王戦の予想

谷川浩司の勝ち(304通)、羽生善治の勝ち(185通)

だった。

①は羽生竜王、②は谷川王位が正解。

この頃の羽生竜王の不調と谷川王位の好調が影響したのかもしれないけれども、意外と羽生推しの票数が少ない。

羽生竜王ほどの日の出の勢いでも、それを上回る谷川王位の勢いがあったということになるのだろう。

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大手町・読売新聞社前。出発前の様子。一緒にいるのは読売新聞の小田尚英記者。将棋世界同じ号、撮影は炬口勝弘さん。
成田へ向かうバスの中。将棋世界同じ号、撮影は炬口勝弘さん。