第3期竜王戦、羽生善治竜王、谷川浩司王位、直前直撃インタビュー

将棋世界1990年12月号、「第3期竜王戦 直前直撃インタビュー、羽生竜王に聞く」より。

竜王戦第1局の1週間前、免状に著名する羽生竜王と、ホテルの部屋で原稿を執筆している谷川王位。将棋世界同じ号、撮影は炬口勝弘さん。

―海外での対局ですが?

羽生 今回が3度目ですか。これから、どんどん増えていけばいいですね。勝手が違う所の対局場なので、心配もあるのですが、1局目ということで、そんなに気にはなりません。丁度いいと思います。

―調子はどうですか?

羽生 良くもなく悪くもなくという所です。シリーズが始まり、進んでいくに連れて昇り坂になるようにしたいな、と思っています。

―去年と今年、自分自身どこが違うと思いますか?

羽生 今年はそれほど緊張なくこれています。そこが去年とは一番違いますね。1ヵ月前、挑戦者が決まった頃はとても緊張していました。今は、開幕まであと1週間もないというのに、近づくにつれてかえってボンヤリしてそれほど緊張していません。

―去年と今年、ご自分は強くなっていると思いますか?

羽生 うーんそうですね。まあ、総合的な面では強くなっていると思いたいですね。

―谷川王位という相手についてはどうですか?

羽生 タイトル戦という舞台で教えて頂きたいと思っていた相手ですが、こんなに早く実現するとは思ってもみませんでした。しかも、まさか私の防衛戦でとは思いませんでした(笑)。

―今シリーズは、どのような戦いになるでしょう。

羽生 2日制で持ち時間も長いし、序盤から気の抜けない戦いになると思います。居飛車での戦いになるとは思いますが、何をやるかはハッキリとは決めていません。谷川先生も矢倉、相掛かり、角換わりと色々やるので戦型の予想は立てにくいと思います。ただ、振り飛車はないでしょう。

―最後に今シリーズの抱負は?

羽生 4月から4連敗してしまい、ファンの方には心配をかけましたので……。この竜王戦で調子を戻したいと思っています。

将棋世界同じ号、「第3期竜王戦 直前直撃インタビュー、谷川王位に聞く」より。

―初の海外ですね。

谷川 どうも、旅行とか観光という方にばかり頭がいってしまって、竜王戦の第1局ということが頭の隅っこにいってしまっています(笑)。お祭り気分が抜けて、腰を落ち着けた戦いは第2局からということになるでしょう。もっとも、対局が始まってしまえば、同じこととは思いますが。

―ハードスケジュールをこなしてきたわけですが、現在の調子はいかがですか。

谷川 好調が続いています。この間、珍しく中4日の対局となりました。それまではずっと中1日、王座戦がなくなった分、そこで休養していたので、だいぶ元気になりました。

―羽生善治という相手について。

谷川 今期に入って成績が良くないようですが、若手がタイトルを取ってその後、勝てなくなってしまうというのは誰もが経験することです。私自身もそうですが、調子のいい時、悪い時というのは必ずあるものです。だから、今こっちが良くて相手が悪くても安心はできません。欲を言えば、あと2ヵ月、この状態であって欲しいと思います(笑)。

―どのような戦型になりますか?

谷川 相矢倉がメインで、あとは角換わりと相掛かり。振り飛車はないと思います。

―シリーズの抱負は。

谷川 昨年、羽生竜王が誕生した時、その日の衛星放送で今一番戦いたい相手であると言いました。それが、実現したことが一番嬉しいです。対戦成績は2勝6敗と負け越していますが、そのすべてが4時間以下の短い対局です。今回は8時間なので、違った面が出るのではと思っています。福崎八段、田中寅八段、高橋九段と、最初の5局から10局ぐらいのうちに負け越してしまう相手が多いのですが、そういう人達に対して少しずつ借りが返せています。羽生竜王に対しても同じであればいいな、と思っています。

―最後に谷川ファンへ。

谷川 今勝っていることが、勢いというのではなく、これが本物でなければいけないと思います。それを証明するためにも、竜王戦を勝たなければいけませんね。

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竜王戦七番勝負、第1局は竜王戦としては初の海外対局(フランクフルト)だった。

羽生善治竜王(当時)は森雞二九段の研究会の旅行で海外に行ったことがあるが、谷川浩司王位(当時)にとっては初の海外だった。

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谷川王位の「欲を言えば、あと2ヵ月、この状態であって欲しいと思います」が可笑しい。

…が、実際にはこの通り(谷川王位が4勝1敗で竜王位を奪取)となっている。

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「今期に入って成績が良くないようですが、若手がタイトルを取ってその後、勝てなくなってしまうというのは誰もが経験することです」

渡辺明三冠などの例外もあるが、このような傾向が存在する。

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この頃に行われた職団戦でアンケートをとった結果が、同じ欄に載っている。500人のファンの声は、

①5年後の名人は?

谷川浩司(222通・1位)、羽生善治(186通・2位)

②竜王戦の予想

谷川浩司の勝ち(304通)、羽生善治の勝ち(185通)

だった。

①は羽生竜王、②は谷川王位が正解。

この頃の羽生竜王の不調と谷川王位の好調が影響したのかもしれないけれども、意外と羽生推しの票数が少ない。

羽生竜王ほどの日の出の勢いでも、それを上回る谷川王位の勢いがあったということになるのだろう。

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大手町・読売新聞社前。出発前の様子。一緒にいるのは読売新聞の小田尚英記者。将棋世界同じ号、撮影は炬口勝弘さん。
成田へ向かうバスの中。将棋世界同じ号、撮影は炬口勝弘さん。