将棋世界1991年5月号、先崎学五段(当時)の「公式棋戦の動き」より。
新人王戦
奨励会の三段というと、昨今の新四段の抜群たる活躍をみても相当な実力を持っていると思うのだが、『将棋ジャーナル』誌によるとアマトップとの対抗戦ではほぼ五分の星で、そんなものかとも思うが、やはり強いのだろう。
深浦三段が好調に勝ち進んでいる。競馬ファンの最高の喜びは、初出走の馬にダービー馬を予感することらしいから、皆さんも本当の将棋ファンを自認するならば、奨励会の三段リーグの結果に一喜一憂されるがよろし。そしてじっと5年ぐらい我慢して、今の羽生、森内、郷田クラスに彼らが成長したとき(5年もかからないかもね)やっぱりねと一人ニヤリと笑い優越感にひたれば、これ将棋ファンの醍醐味なり(枕草子みたいになってしまった)。
棋風は矢倉の正統派だそうで、仲間の三段陣に言わせると、終盤にケレン味があるとのこと。これ今の若手棋士の特徴なり。富岡六段との一戦に於いても、緩急よろしきを得、1分将棋の富岡六段に対して時間を十分に余しての快勝は、いとすえおそろし。
次の丸山四段戦を突破すれば、残りも強敵揃いなれど、決勝戦進出も夢ではなく、ただし日頃仲が良いといえども丸山早稲田大学、すんなりここを通すとは思えずいとおもしろし。乞御期待。
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この時の深浦康市三段(当時)は、新人王戦の次の戦いで丸山忠久四段(当時)を破り、準々決勝で郷田真隆四段(当時)を破り、その20日後に四段昇段を決め、さらにその4日後の準決勝で森内俊之五段(当時)に敗れている。
勝った相手が凄いし、まさに「いとすえおそろし」の勢い。
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「皆さんも本当の将棋ファンを自認するならば、奨励会の三段リーグの結果に一喜一憂されるがよろし」
この頃の三段リーグは次のメンバー。(敬称略)
- 小池裕樹(安恵 24歳)
- 真田圭一(加瀬 18歳)
- 豊川孝弘(関屋 24歳)
- 深浦康市(花村 19歳)
- 庄司俊之(佐瀬 22歳)
- 鈴木純一(佐伯 25歳)
- 近藤正和(原田 19歳)
- 斎田純一(高柳 19歳)
- 小牧毅(西村 24歳)
- 北島忠雄(関根 25歳)
- 飯塚祐紀(高柳 22歳)
- 中座真(佐瀬 21歳)
- 石堀浩二(石田 21歳)
- 田畑良太(大友 27歳)
- 荒井辰仁(西村 26歳)
- 小泉有明(佐藤義 27歳)
- 伊藤能(米長 29歳)
- 野間俊克(南口 26歳)
- 愛達治(佐瀬 26歳)
- 金沢孝史(勝浦 17歳)
- 木村一基(佐瀬 17歳)
- 秋山太郎(宮坂 23歳)
- 村田登亀雄(板谷四 26歳)
- 立石径(有吉 16歳)
- 三浦弘行(西村 17歳)
- 岡崎洋(所司 23歳)
- 石飛英二(田中魁 23歳)
- 小河直純(佐伯 22歳)
一喜一憂し甲斐のあるメンバー揃いだ。
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二段時代から勝敗に一喜一憂するようにすると、更に醍醐味を味わうことができると思うが、場合によっては胃が痛くなることも増えてくるかもしれず、この辺のバランスが難しそうだ。