山崎隆之4級(当時)

将棋マガジン1993年4月号、「スポットライト奨励会」より。

将棋マガジン同じ号より。

 ここ2、3年、やや小粒化した観のあった関西奨励会だが、久々に大物が現れたようだ。この山崎君、11歳(本誌発売時には12歳)という若さもさることながら、新入会後の星が◯◯◯◯●◯◯◯◯◯昇●◯◯◯◯◯●◯●◯◯◯昇◯◯◯◯●◯●と、一つの白星も無駄にせずあっさり4級に昇級。1月後半の例会で1勝2敗と少しペースダウンしたものの、ほぼ8割の勝率を保っているのだから凄い。

 さらにある日、彼と同郷の某二段が、このいたいけな少年からお小遣いを巻き上げようとして「将棋教えてあげようか、ま、5倍層位でいいかな?」と言葉巧みに誘い込んだまでは良かったが、結果は勝ち越すのがやっとで当初の目論見とは裏腹に、5倍層を振った分、かなりの出血があったと聞く。

 はっきり言って下級者が運やその場の勢いだけで、修羅場をくぐり抜けてきた二段を相手に互角の勝負を展開できるとは思えない。彼の実力は、すでに現在の級以上にあると見てまず間違いないだろう。

 気の早い関係者からは、兄弟子の「村山六段クラスの才能の持ち主」との声もあがっていて、とにかく将来が楽しみな存在である。

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山崎隆之八段は1992年9月の奨励会入会。

年齢が若くて昇級スピードも早い。入会半年ほどでこのように取り上げられるのだから凄い。

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山崎隆之少年が奨励会に入会する前は、広島将棋センターで、1学年下の片上大輔少年とともに、高成績を上げ続けていた。

二人の名前は、かなり前から近代将棋の「棋界ニュース」に載っており、例えば、近代将棋1989年6月号には、第9回広島小中学生名人戦の小学生低学年の部の結果が次のように出ている。

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「同郷の某二段」は、当時の奨励会員一覧で見ると、今泉健司二段(当時)である可能性が高い。

今泉四段の奨励会時代も人気者で、奨励会の記事ではよく話題となっていた。

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今月、森信雄七段の一門について書かれた『一門 “冴えん師匠”がなぜ強い棋士を育てられたのか?』が刊行された。

森信雄七段、奥様、一門の弟子へのインタビュー、羽生善治九段が語る師弟論という構成からなるノンフィクションの力作。

初めて知ることも多く、著者の神田憲行さんの取材は非常に素晴らしいと強く感じさせられた。

その初めて知ることも、ひとつひとつに重みのある貴重なエピソードばかり。

森一門ファンの方はもちろんのこと、多くの将棋ファンの方に読んでいただきたい一冊だと思う。