「スタミナは対局前につけるべきで、当日胃に血が行くのはもったいない」と考えた棋士

将棋マガジン1987年6月号、コラム「棋士達の話」より。

  • 15年位前の加藤一二三九段は昼食の注文に「私は弁当の上、300円ので結構です」と答えることが多かった。ある日も同じように答えたところ「今日から値上げで、300円では上になりません」リズムが狂ったのかその日は調子が良くなかった。

  • 18年前のこと。スタミナは対局前につけるべきで当日胃に血が行くのはもったいない、と大内六段(当時)の昼食はトマトジュースが多かった。また富沢八段はかけうどんを頼み、これは汁だけすすって麺は残した。それでも深夜まで頑張った。

  • 指導に出かけた武者野五段、打ち上げの席で「私はレタスが好きで、皿一杯食べたいですね」と言ったが、言い間違えか相手の勘違いか山盛りに出てきたのはパセリ。仕方ないので食べたがとても全部は無理。半分で「今日は調子が悪い」とダウン。

  • 加藤治郎名誉九段はビール党。そしてその際の自慢はトイレに立たないこと。信じられない、と何人かでどんどんすすめた。もちろん自分達も飲むが、次々と席を立つ。しかし加藤名誉九段だけは平然。「6本飲んだはずだが、あれはどこに行った?」

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1987年の15年前は、まだオイルショックの前の1972年。

当時の物価を調べてみると、かけそばが120円、ラーメンが140円だったらしい。

現在の立ち食いではない蕎麦屋でのかけそばが500円とすると、当時の300円の弁当は現在の1,250円に相当する。

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「スタミナは対局前につけるべきで、当日胃に血が行くのはもったいない」

当時、カロリーメイトのようなものがあれば、大内延介六段(当時)や富沢幹雄七段(当時)には歓迎されたことだろう。

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パセリとセロリとレタスは、慌てている時などに聞くと、どれがどれだったか混乱してしまう場合がある。

ポタージュ系のスープにみじん切りになったパセリが少しだけ入っているのは好ましい光景だが、洋食で付け合せになっている盆栽のようなパセリは、世の中の多くの人に敬遠されている。

山盛りのパセリを食べるハメになった武者野勝巳五段(当時)は災難としか言いようがない。

先日、ワンタン麺を頼んだら、私の発音が曖昧だったのか先方の聞き間違えか、担々麺が出てきたことがあった。

担々麺も好きなのでそのまま食べることにしたが、レタスの代わりにパセリが出てくるのに比べれば天国のようなものだと思う。