先崎学六段(当時)「このことを佐藤君に言わなきゃ気が済まない」

将棋世界1996年2月号、野口健さんの「編集後記」より。

 エッセイにある通り、先崎六段の飛行機嫌いは相当なもので、往きは珍しく言葉も少なめで不安そう。

 ところが、帰りは可愛いスチュワーデスの方と対面の席で、ちゃっかりと話が弾んでいました。そして「このことを佐藤君に言わなきゃ気が済まない」とテレビ東京へ……。

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この話の前段は、昨日の記事の次の部分。

 博多の空港は近い。またたく間に着いて、チェックインをする。
「並びはあるかな、佐藤君、悪いけど喫煙席でいいかい」
「いや、ええ、私は、別で」
「なんだ冷たいな、煙草くらいで」
「いや、はあ、実は、スーパーシートなんですけど……」
 ああ負けるということはせつないことでござんす。すべて私が悪いのです。
 東京へ着いたが、栄養の取り過ぎで、体力があり余っている。とても帰る気がしない。仕方がないので、テレビ東京のスタジオに行き、南-佐藤戦を観戦した。

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スーパーシートとスチュワーデス(当時)席の向かい、どちらが幸せなのだろう。

この当時は座席指定ができなかったので、スチュワーデス席の向かいに座ることができるかどうかは、全くの運任せだった。

そのように考えると、お金を出せば座ることができるスーパーシートよりも、お金を出してもどうにもならないスチュワーデス(当時)席の向かいの方が、貴重と考えることができる。

しかし、スチュワーデス(当時)がその席に座るのは、離陸時と着陸時、まれに気流が悪い時、だけなので、冷静に考えればスーパーシートの方が価値が高いとも考えられる。

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生まれて初めて飛行機に乗ったのは27歳の時、羽田→福岡便だった。

座席はスチュワーデス(当時)席の前。

えっ、こんな簡単にこのような席に座れてしまうものなのか、とビックリした。

ビギナーズラックという言葉が頭の中を駆け巡った。

とはいえ、目を合わせるわけにもいかず、離着陸時は無理をして機内誌を読んでいた。

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その帰りの便(福岡→羽田)でのこと。

機内は結構空いていて、周りは空席ばかりだった。

富士山を過ぎる頃、スチュワーデス(当時)さんがこちらにやってきて、

「あそこが富士山なんです。夕陽に映えてとても綺麗ですよね」

と、しみじみと説明してくれた。

他の分野でのビギナーズラックの分まで今回で使い果たしてしまったのではないか、と思いながら、「そ、そうですね。綺麗ですね」と相槌をうった記憶がある。

実際、その後から現在に至るまで、様々な分野においてビギナーズラックは起きていない…

 

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