将棋マガジン1996年7月号、グラビア「NHKの朝ドラに将棋!!ヒロインは将棋指し」より。
NHKの朝のドラマに、プロ棋士を目指す女性がヒロインとして登場することになった。
これは10月7日放送開始の次期連続テレビ小説「ふたりっ子」の話である。大阪の下町を舞台に、二卵性双生児の姉妹、麗子と香子が歩む対照的な人生を描くドラマだが、妹・香子が奨励会から女性初の四段になり、活躍するという設定。
将棋ファンにとっては、どんな場面が出てくるか、毎朝楽しみなドラマである。
4月25日に行われたNHK大阪放送局で行われた制作発表には谷川浩司九段も参加して、出演者と写真に収まった。将棋のイメージアップにつながりそうなドラマだ。
羽生善治七冠誕生がこの年の2月14日のこと。
その熱気が醒めやらぬうちに放送開始されたNHK朝の連続テレビ小説「ふたりっ子」。
「ふたりっ子」が始まって1~2ヵ月後、近所のそこそこ大きな書店で将棋雑誌を買った時、店主のおばあさんが、「ふたりっ子をいつも観てるんだけど、私も将棋を覚えようかと思っているんだよね」と会計のときに笑顔で語りかけてくれたのを憶えている。
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1994年度から現在に至るまでのNHK朝の連続テレビ小説の中で、「ふたりっ子」は最も高い期間平均視聴率を獲得している。
→NHK朝の連続テレビ小説視聴率【関東地区】(ビデオリサーチ)
舞台となった関西地区での視聴率は、もっと高かったと考えられる。
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将棋マガジン1996年9月号、谷川浩司九段の「懸賞詰将棋」より。
NHK大阪制作で10月から始まる朝の連続ドラマ「ふたりっ子」。
ダブルヒロインのうちの一人、野田香子がプロ棋士を目指す、というストーリーですが、先日その収録のため大阪へ出向きました。
私の役は、野田香子に弟子入りを志願されて断る、というプロ棋士の役。他にも内藤九段と神吉六段が出演します。
撮影は20分程で順調に進みましたが、これは、素人にいろいろと注文を出しても上手くならない、とスタッフが判断したからでしょうか―。
放映は10月下旬とか。
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ドラマの中とはいえ、弟子入りを断る谷川浩司九段。(右手に立っているのは野田香子)
都成竜馬少年が谷川九段の弟子になるのは、この4年後のこと。
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将棋マガジン1996年9月号、神吉宏充六段(当時)の「禁断の戦法」より。
10月からスタートするNHK朝の連続ドラマ『ふたりっ子』の収録がいよいよ始まった。将棋の棋士を目指すヒロインが、プロになるために師匠を探す時、実際に本物の棋士が登場するのだが、内藤國雄九段、谷川浩司九段、そして私の3人が出演することになった。
その状況設定が面白い。谷川九段はタクシーに乗る際にヒロインから「弟子にして下さい!」といきなり声を掛けられ、内藤九段はスナックでヒロインを店の新入りの娘に間違えて、デュエットしようとする変なオヤジの設定である。
私? 聞いて下さいな皆さん……。自宅のマンションから出てくるところをヒロインが待ち伏せしている設定なのだが、監督から「なるべくド派手な服装でお願いします」と言われ、それなら普段着ているやつでいいかと、水色のんでビシッと決めて行きましてん。
現場到着。いきなり監督「手品がお好きと伺っているんですけど、トランプは今日持ってもられますか?」
「ええもちろん、いつも持って歩いてますけど」
「良かった。じゃあ、そのマンションから出てきてもらうんですけど、トランプをピャーとカットしながら登場してもらえませんか?」
「は、はあ。ピャーとですか?」
「そう、ピャーです。そうしながら、玄関で待ち伏せしている香子(ヒロイン)に笑顔で微笑みながら去っていくんです」
自宅のマンション出るとき、マジシャンでもそんなピャーとしながら出ていく奴はおらんやろ……しかも私は将棋のプロやがな! と思いつつも、監督の巧みな褒め言葉とリードに「へぇへぇ、喜んで」とやってしまう私であった。
セリフもある。再現すると、香子が「あっ、あの!」で振り返る私。
「私を弟子にして下さい! プロになりたいんです」
「プロにて……あ、そう。ほんでも女の子はなあ」
「ワタシ、女と違います!」
「お、女違うて……あ、そう。う~ん見事やねぇ」
香子の女と違う発言は、どんなつらい修行も耐えます。そのために女であることを捨てます。という意味だが、何を勘違いしたのか、ドラマの私は香子をしげしげ見ながら、感心してしまう。本当に女違うと思て、ニューハーフと間違えてしまうのだが、それにしても「見事やねぇ」とは……。しかも最後のセリフが「じゃ、そういうことで」で去っていくのである。朝、これを見た人は絶対私のことを変な奴だと思うに違いない。トホホ……。
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「内藤九段はスナックでヒロインを店の新入りの娘に間違えて、デュエットしようとする変なオヤジの設定である」
写真の内藤國雄九段の向かって左にいるのは野田香子。
内藤九段が、酔っぱらい風のとてもいい味を出している。
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「ええもちろん、いつも持って歩いてますけど」
撮影の時にまでもトランプを常備している神吉宏充六段(当時)が可笑しい。
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将棋マガジン1996年10月号、鹿野圭生女流初段(当時)の「タマの目」より。
今秋から始まるNHKの朝ドラは”ふたりっ子”。双子姉妹の一人が棋士を目指すというストーリーだそうで、将棋連盟もいろいろ協力している。かくいうタマも、棋譜読み上げの手伝いに駆り出されているのだけど、先日、奨励会員がこんな話をしていた。
津山初段「僕と阪口君もエキストラで出演することになってるんですよ」
タマ「ごっつい二人やなぁ。津山君、君、体重なんぼあるの?」
津山「いや、僕は80キロ位ですけど……」
タマ「ほな、阪口君の方がもっと重いん?」
津山「はあ。僕がローピンで阪口君がキューピン言われてますから」
タマ「………(麻雀パイを思い浮かべてる)なるほど」
下野三段「阪口君は100キロ以上あるらしいですよ」
津山「これじゃあ”ふとりっこ”ですよね……」
―一同大爆笑―
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「はあ。僕がローピンで阪口君がキューピン言われてますから」
津山慎悟初段(当時)が六筒で、阪口悟1級(当時)が九筒。
雰囲気がよく伝わってくる。
津山初段は有吉道夫九段門下なので、鹿野圭生女流初段(当時)の弟弟子にあたる。
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「これじゃあ”ふとりっこ”ですよね……」
あまりにも見事、あるいは絶妙としか言いようがない。
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→「ふたりっ子」(NHKアーカイブス NHK放送史 朝ドラ100)