将棋世界1997年4月号、沼春雄六段(当時)の第46期王将戦七番勝負第4局〔羽生善治王将-谷川浩司竜王〕観戦記「羽生、復活の防衛劇」より。
羽生はスポーツニッポン紙上に手記を発表したが、その中に”調子が悪いからといって、こうすればいいという良薬を私は持ち合わせていません。いい状態を長く、悪い状態をできるだけ短く―そう心がけるだけです”という一節があった。
自分の好不調を冷静に判断して現状での最善手を探す。
誰にでもできそうだが実は最難事の一つである。それを自分に実行できるところが第一人者たるゆえんなのだろう。
これで羽生は初の王将防衛を決めるとともに見事な復活劇を見せてくれた。
(以下略)
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竜王戦を1勝4敗で敗れて一冠を減らした羽生善治五冠(当時)だったが、王将戦では4連勝で谷川浩司竜王(当時)を破り、防衛を果たしている。
第4局の羽生王将の絶妙手→羽生善治五冠(当時)のプロ感覚からすれば非常識きわまりない絶妙な手順
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「いい状態を長く、悪い状態をできるだけ短く、そう心がけるだけです」
沼春雄六段(当時)が「誰にでもできそうだが実は最難事の一つである。それを自分に実行できるところが第一人者たるゆえんなのだろう」と書いている通り、これが普通の人でもできるような方法があれば、その方法を見つけた人はノーベル賞を取ることができると思う。
大山康晴十五世名人は、自らの著書『大山将棋勝局集』で次のように述べている。
「勝率が落ちた場合、私は一日も早く悪い状態から抜け出すように努力する。周囲から『スランプじゃないか』と注意されて初めて気がつくようでは、もう手遅れだ。私は他人から注意されないうちに、平素から自分のペースをきめておき、自分の調子が落ちていないか、どうかと気を配っている。スランプは避けがたい病根だが、要は苦しくとも耐えしのぶことだ。じっと耐えてチャンスを待てば、道は自ら開ける」
一方、大山康晴十五世名人は、『大山将棋勝局集』が発刊された2年後の1985年のインタビューで、
「大山先生の本で、不調の時、身辺を整理して乗り切ったと書かれていましたね」という質問に、
「不調の時に身辺整理なんてできるもんじゃない。不調の原因なんて本人がわかるわけない。わかってれば直せます。実際不調の時は何をしていいかわからない。立ち直って何年かしてみて、ああそうかとわかるもんですよ」
と語っている。
要は、じっと耐えてチャンスを待つしかなさそうだ。
第一人者ほど、じっと耐える期間が短く済む、ということなのだろう。
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不調の原因がメガネが合わなくなってきていることだったと判明し、メガネを変えてからすぐに好調に転じたケースもある。
将棋以外にも役が立ちそうな事例だと思う。